研究

中国人アニメツーリストの訪日巡礼行動を調査、共通感情形成の5段階プロセスをFrontiers in Psychology誌で報告

いま、日本の観光は。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 学術誌『Frontiers in Psychology』に、訪日する中国人アニメツーリストの巡礼行動と感情形成メカニズムに関する研究が掲載された。

 質問紙調査や深層面接、参与観察を組み合わせた混合研究法により、若年層を中心とした消費行動の特徴と、ファン同士が共有する「共通感情」が形成される過程が段階的に整理された。

若年層中心の訪日アニメツーリズムの実態

 研究は、日本のアニメ作品にゆかりのある場所を訪れる「聖地巡礼」を目的とした中国人観光客を対象に実施された。オンラインとオフラインを合わせて200件の質問紙を配布し、196件を回収(回収率98%)、うち有効回答は189件(有効回答率96.4%)だった。加えて、アニメへの関与が活発な回答者の中から18人を選び深層面接を行い、2025年2月には東京の秋葉原と埼玉県鷲宮町で参与観察を実施した。

 基本属性を見ると、回答者の90%が「95後(1995年以降生まれ)」「00後(2000年以降生まれ)」で構成され、女性の割合が男性を上回った。教育水準が高く、経済的に発展した都市に居住する層が中心であることも確認された。行動面では、象徴性の強い観光消費、SNS上での能動的な発信、儀式化された文化的アイデンティティの表現が特徴として示された。

映画・アニメ観光研究における位置づけ

 アニメを題材にした観光は、映画を契機とする観光(フィルムツーリズム)と共通する要素を持ちつつ、長期的なIP展開やファン同士の継続的な関与によって支えられる点で異なる傾向を持つと整理されている。研究では、日本のアニメ聖地巡礼が地理的な近さや文化的な親しみやすさ、比較的緩やかな査証制度を背景に、中国人観光客の間で安定した需要を維持してきた経緯にも言及した。

 背景として、中国では「汎アニメ」層とされる利用者が4億人を超えるとされ、日本アニメが中国のZ世代(1995年から2009年生まれ)の成長過程と重なってきた経緯が指摘されている。2019年には中国の旅行プラットフォーム「馬蜂窩(Mafengwo)」と日本アニメツーリズム協会が提携し、巡礼旅行に関する情報提供を進めてきた経緯もあり、日本の訪日観光消費額とあわせてアニメ観光市場が拡大してきた流れの中に、本研究の対象者は位置づけられる。

事実関係の整理

  • 情報の種類:学術研究(混合研究法による調査論文)
  • 掲載誌:Frontiers in Psychology
  • 対象:訪日する中国人アニメツーリスト
  • 主要データ:質問紙189件(有効回答率96.4%)、深層面接18人、参与観察(2025年2月、東京・秋葉原、埼玉県鷲宮町)
  • 主要な整理内容:共通感情の形成過程を「象徴化」「表現の儀式化」「共有アイデンティティの階層的構築」「コミュニティを通じた伝達」「動的な影響メカニズム」の5段階として整理し、文化的シンボル、感情的価値、産業間連携、デジタル発信の4つの観点から運用面の論点が示された

参考文献


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