京都大学、1型糖尿病のインスリン投与量と自律神経活性バランスの関連を日常生活下で確認
京都大学の研究グループは、1型糖尿病のある人を対象に、日常生活中のインスリン投与量と自律神経活性バランスが関連することを明らかにした。
ウェアラブル心電計で記録した心拍変動から交感神経と副交感神経の活動バランスを評価し、インスリンの投与タイミングや量との関係を解析した結果、追加インスリンと基礎インスリンそれぞれの投与量が、時間帯の異なる交感神経優位の程度と関連することが示された。
インスリン投与量と交感神経優位の時間帯別関連を確認
京都大学の近藤亜樹医学研究科博士課程学生(研究当時)、池田香織講師、稲垣暢也名誉教授、矢部大介教授らの研究グループは、1型糖尿病のある人を対象に、日常生活中のインスリン投与量と自律神経活性バランスの関連を調べた。ウェアラブル心電計で記録した心拍間隔の変化(心拍変動)から交感神経と副交感神経の活動バランスを評価し、1日に数回投与されるインスリンのタイミングや量との関係を解析した。
その結果、1日の最後に投与する追加インスリン(短時間作用するインスリン)の量は、夜の就寝後における交感神経優位の程度と関連していた。また、基礎インスリン(長時間作用するインスリン)の量は、朝の起床前における交感神経優位の程度と関連していた。これらの関連は、HbA1cや持続血糖測定で得られた血糖状態の影響を統計的に調整した後も見られたと報告されている。
実験的環境での知見と日常生活下での検証の位置づけ
インスリンが交感神経を活性化することは、実験的な環境で行われた研究では既に示されていた。一方で、日常生活の中でインスリン投与と自律神経活性の関係がどのように現れるかについては、十分に分かっていなかったという。今回の研究は、ウェアラブル機器を用いて1型糖尿病のある人の日常生活データを詳細に記録・収集することで、この関係を実生活の条件下で確認した点に位置づけられる。
交感神経優位は心血管リスクと関連することが指摘されている。研究グループは、今回の成果がインスリン治療と心血管リスクとの関係を考える上で新たな視点を加えるものとしている。ただし、研究者のコメントとして、観察された交感神経優位が何らかの症状や合併症の重症度に関わる程度のものかは現時点で分かっておらず、インスリン投与量を減らすことで交感神経優位が抑制されるかどうかも不明であるとされている。自己判断でインスリン投与量を減らすことは高血糖を引き起こす危険があるとも述べられている。
事実関係の整理
- 情報の種類:学術研究(観察研究)
- 発表元:京都大学医学研究科(近藤亜樹氏、池田香織氏、稲垣暢也氏、矢部大介氏ら)
- 対象:1型糖尿病のある人
- 主要方法:ウェアラブル心電計による心拍変動測定、インスリン投与量・タイミングとの関係解析
- 主要結果:追加インスリン量は就寝後、基礎インスリン量は起床前の交感神経優位と関連し、血糖状態調整後も関連は維持
- 掲載誌:米国学術誌「Diabetes」(2026年9月14日オンライン掲載)
- 留意点:観察された関連と合併症の重症度との関係は不明であり、自己判断によるインスリン量の変更は高血糖のリスクがある
参考文献