研究

大阪大学、院外心停止で救急隊到着前のAED電気ショックが良好な神経学的転帰と関連することを全国約3,800人の解析で報告

グローバル医療と社会の関係をテーマに、タブレット端末を操作する医療従事者のイメージ

 大阪大学大学院医学系研究科と国立循環器病研究センターの研究グループが、全国の院外心停止登録データを用いて、救急隊到着前に市民が自動体外式除細動器(AED:Automated External Defibrillator)による電気ショックを行った場合の転帰を解析した。

 2022年から2023年に発生した公共の場での心室細動による院外心停止患者約3,800人を対象に、電気ショックのタイミングを考慮した統計手法で検討した結果、救急隊到着前にAEDによる電気ショックを受けた患者では、1か月後に脳の機能が良好な状態で生存している割合が高いことが示された。

救急隊到着前のAED電気ショックと良好な転帰の関連

 研究グループは、総務省消防庁の全国院外心停止登録データを用い、2022年から2023年に日本全国で発生した院外心停止283,303人のうち、公共の場で市民により目撃され、AEDによる電気ショックの対象となる心室細動の患者3,838人を解析した。このうち、救急隊到着前に市民によるAED電気ショックを受けた患者は1,697人(44.2%)で、半数以上は電気ショックを受けていなかった。

 時間依存性傾向スコア逐次マッチング法を用いて解析した結果、1,664組の患者を比較することができた。心停止発生1か月後に良好な神経学的転帰を伴って生存していた割合は、AED電気ショックを受けた群で54.0%、受けなかった群で39.6%であり、市民によるAED電気ショックは良好な神経学的転帰と有意に関連していた(調整後リスク比1.46)。さらに、心停止の目撃からAEDによる電気ショックまでの時間を5分ごとに分けて解析したところ、電気ショックまでの時間にかかわらず、おおむねAED電気ショックを受けた群で良好な神経学的転帰が認められた。

市民によるAED使用の位置づけと従来の課題

 院外心停止は時間の経過とともに救命できる可能性が低下するとされ、特に心室細動による心停止ではAEDによる早期の電気ショックが救命に重要であることが知られている。日本では2004年から市民によるAEDの使用が認められ、現在では公共施設などに約69万台のAEDが設置されているが、公共の場で心停止が発生した際に居合わせた市民によるAED電気ショックが実施される割合は依然として高くないとされる。

 これまで市民によるAED電気ショックの有効性は報告されてきたが、電気ショックまでの時間を考慮した評価は十分ではなかった。救急隊到着までの時間が長い患者ほど市民によるAED電気ショックを受ける機会が増える一方、長時間の心肺蘇生が必要な患者は予後が悪くなりやすいため、単純な比較では効果を正しく評価できない可能性があった。本研究では、こうした比較の偏りを減らすため、電気ショックを行ったタイミングを考慮できる時間依存性傾向スコア逐次マッチング法を用いた。

事実関係の整理

  • 情報の種類:全国データを用いた観察研究
  • 発表主体:大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学、国立循環器病研究センター情報利用促進部
  • 対象:2022~2023年に公共の場で市民に目撃された心室細動の院外心停止患者3,838人
  • 主要指標:1か月後の良好な神経学的転帰(CPC1またはCPC2)、調整後リスク比1.46
  • 掲載誌:米国心臓協会の学術雑誌『Journal of the American Heart Association』(2026年7月31日オンライン掲載)
  • 留意点:観察研究であり、示された関連は因果関係を直接証明するものではない

参考文献


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