東北大学、高血糖ストレスが骨細胞のRNA結合タンパク質HuRの働きを変化させることを発見
東北大学の研究グループは、高血糖状態にある環境下でRNA結合タンパク質の働きによって、骨細胞における遺伝子発現の転写後調節が変化することを報告した。
RNA結合タンパク質HuRの働きを欠くと、mRNAの量と実際に作られるタンパク質の量の間の連動性が変わることが示され、糖尿病に伴う骨疾患の理解に関わる知見として位置づけられている。
高血糖下でHuRの働きが骨細胞の遺伝子発現調節に関わることを確認
東北大学大学院歯学研究科のFan Ziqiu助教、北浦英樹教授、金高弘恭教授、および同大学学際科学フロンティア研究所のAseel Marahleh助教らの研究グループは、高血糖状態の環境における骨細胞の応答に関わる分子として、RNA結合タンパク質の一種であるHuRを特定したと発表した。研究グループは、HuRを欠損させることによって、選択的スプライシング、翻訳シグナル伝達、ミトコンドリア機能、そしてTXNIPのmRNAとタンパク質の連動性が変化することを明らかにしたと説明している。
TXNIPは主要なグルコースセンサーであり、細胞内のレドックス調節や代謝ストレス応答に関与するタンパク質とされる。今回の解析では、トランスクリプトーム全体のスプライシング解析によって、HuRが遺伝子発現の転写後調節における候補制御因子として特定されたと報告されている。
骨細胞と高血糖環境をめぐるこれまでの位置づけ
高血糖状態は、骨がもろくなる、骨折しやすくなるといった状態と関連することが知られている。しかし、骨の中で最も数の多い細胞である骨細胞が、高血糖状態によるストレスにどのように適応するのかという分子メカニズムについては、十分に解析されていなかったと研究グループは説明している。
RNA結合タンパク質は、DNAの遺伝情報を読み取ってアミノ酸を連結しタンパク質を合成するまでの過程で、核酸に結合するタンパク質を介してRNAの加工や安定化、翻訳への橋渡しを調節する役割を担うとされる。今回特定されたHuRは、RNAの安定性や翻訳、スプライシングの調節に関与するRNA結合タンパク質として位置づけられている。転写後調節とは、DNAからmRNAが作られる転写の後に、mRNAの分解や翻訳の効率が変わることで最終的なタンパク質の量がコントロールされる仕組みを指す。
事実関係の整理
- 情報の種類:大学発表による研究成果
- 発表主体:東北大学大学院歯学研究科・学際科学フロンティア研究所の研究グループ
- 対象・手法:高血糖環境下の骨細胞、トランスクリプトーム全体のスプライシング解析
- 主要な発見:RNA結合タンパク質HuRの欠損による選択的スプライシング、翻訳シグナル伝達、ミトコンドリア機能、TXNIPのmRNAとタンパク質の連動性の変化
- 掲載誌・日付:科学誌『iScience』、2026年8月10日掲載
- 留意点:本研究は基礎的な分子メカニズムの解析であり、臨床応用の段階を示すものではない
参考文献