研究

東北大学と京都大学、炎症を起こすタンパク質「パイリン」の活性化にCDC42が関わる仕組みを発見

病気の克服を目指す研究動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 東北大学と京都大学などの国際共同研究チームは、細胞内で病原体の侵入を感知するタンパク質「パイリン」が、別のタンパク質「CDC42」と相互作用することで活性化される仕組みを明らかにした。

 遺伝子変異によってこの相互作用が異常に強まると、パイリンの働きが過剰に活性化し、家族性地中海熱(FMF)などの自己炎症性疾患で見られる過剰な炎症反応を引き起こすことを示した。成果は2026年8月にScience Immunology誌に掲載された。

パイリンとCDC42の相互作用による炎症活性化の仕組み

 東北大学大学院医学系研究科の岩田直子助教、京都大学高等研究院・ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)の本田賢也拠点特定教授らを中心とする国際共同研究チームは、細胞内センサーとして働くタンパク質「パイリン」が、細胞の形を制御する因子として知られる「CDC42」と相互作用することで活性化される仕組みを明らかにした。通常、パイリンとCDC42の相互作用は弱く保たれているが、病原体の侵入を感知するとこの相互作用が強まり、パイリンが活性化して炎症反応を引き起こすという。

 研究チームはさらに、遺伝子変異によってパイリンとCDC42の相互作用が異常に強まる状態があることを見いだした。家族性地中海熱(FMF)に関連するパイリンの変異体や、一部のCDC42変異体では、病原体の侵入がなくてもパイリンとCDC42の複合体(クラスター)が形成されやすくなり、わずかな刺激で過剰な炎症が引き起こされることが確認された。

自己炎症性疾患とパイリンをめぐるこれまでの研究の位置づけ

 炎症は、細菌やウイルスなどの病原体から体を守るために備わった重要な防御反応である一方、この仕組みの制御機構に生まれつきの異常があると、わずかな刺激で炎症が過剰に起こってしまう遺伝性自己炎症性疾患を引き起こすことがある。その代表的な疾患に、高熱や激しい腹痛を繰り返す家族性地中海熱(FMF)がある。FMFは「MEFV」という遺伝子の変異によって起こり、日本では500人程度の患者が報告されており(2009年全国調査)、指定難病(266)に分類されている。

 パイリンは、インフラマソームと呼ばれるタンパク質複合体の核となる「センサー」として働き、病原体の侵入などの異常を感知すると重合し、炎症を誘導する司令塔として機能することが知られていた。今回の研究では、こうしたパイリンの活性化にCDC42という別のタンパク質が関与していることが新たに示された。CDC42はパイリンの直接の制御因子であることも明らかになり、これまでゲノムデータベースに登録されているものの、病気との関係がはっきりしなかった多数のパイリン遺伝子の変異を、機能に基づいて整理する「アトラス」の構築にもつながる知見として位置づけられている。

事実関係の整理

  • 情報の種類:大学発の研究発表(プレスリリース、学術論文2本)
  • 発表元:東北大学大学院医学系研究科、京都大学高等研究院・ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)などの国際共同研究チーム
  • 対象:パイリン(Pyrin)とCDC42というタンパク質の相互作用、家族性地中海熱(FMF)関連の遺伝子変異体
  • 主要な知見:通常は弱いパイリンとCDC42の相互作用が、病原体感知時やFMF関連変異、一部のCDC42変異により強まり、パイリンの過剰な活性化と過剰な炎症につながる
  • 掲載誌・時期:Science Immunology誌に2026年8月7日(米国東部時間、日本時間8月8日)付で2本の論文として掲載
  • 留意点:本研究は分子レベルの機構解明であり、治療法そのものの確立を示すものではない

参考文献


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