京都大学と東北大学、G12シグナルが表皮バリア機能を高める伝達経路をマウス皮膚で確認
京都大学大学院薬学研究科と東北大学大学院薬学研究科などの研究グループは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)が伝達するG12シグナルを人工的に活性化すると、表皮が肥厚しバリア機能が高まることを確認したと発表した。
アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患では表皮のバリア機能に異常が生じ、乾燥やかゆみ、炎症などの症状が引き起こされる。今回の研究成果は、こうした皮膚疾患に対する新たな治療法の開発につながる可能性があるとしている。
G12シグナル活性化が表皮バリア機能を高めることを確認
京都大学大学院薬学研究科の博士課程学生と東北大学大学院薬学研究科教授を兼任する井上飛鳥氏、および京都大学大学院医学研究科の椛島健治教授らの研究グループは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)が担う複数のシグナル伝達経路のうち、G12シグナルに着目した研究を行った。研究グループは、特定のデザイナー薬物にのみ反応する人工受容体であるデザイナー受容体(DREADD)を用いて、G12シグナルを選択的に誘導する実験を実施した。その結果、表皮においてG12シグナルの活性化が表皮の肥厚と表皮バリア機能の向上を促進することが明らかになったと報告している。
皮膚バリア機能と既存治療の位置づけ
皮膚の最も外側にある表皮は、異物の侵入や水分の蒸散を防ぐ重要なバリアとしての役割を担っている。健康な皮膚では、表皮を構成するケラチノサイトの増殖と分化のバランスが保たれることで、この構造とバリア機能が維持されている。一方、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患では、このバランスに異常が生じて表皮構造とバリア機能が破綻し、病原体の侵入や水分の過度な蒸散が起こりやすくなることで、かゆみや炎症、乾燥といった症状につながるとされる。
現在、こうした皮膚疾患の治療にはステロイド外用薬や保湿剤などが用いられているが、表皮のバリア機能そのものの改善を目的とした治療薬は限られているとされる。GPCRは薬の主要な作用標的の一つであり、創薬研究において重要な研究対象とされている。研究グループは、G12シグナルを誘導する内在性GPCRが存在することから、こうしたGPCRに対する作動薬の開発が、皮膚疾患の新たな治療法につながることを期待しているとしている。
事実関係の整理
- 情報の種類:大学の研究発表(プレスリリース)
- 発表元:京都大学大学院薬学研究科、東北大学大学院薬学研究科
- 研究グループ:京都大学の井上飛鳥氏(東北大学大学院薬学研究科教授を兼任)、京都大学大学院医学研究科の椛島健治教授ら
- 使用手法:デザイナー受容体(DREADD)によるG12シグナルの選択的活性化
- 主な結果:表皮の肥厚と表皮バリア機能の亢進を確認
- 掲載論文:『FASEB BioAdvances』(2026年7月31日掲載、DOI:10.1096/fba.2026-00042)
- 留意点:今回の成果はマウスを用いた基礎研究段階の知見であり、ヒトへの治療応用については今後の研究が必要とされる
参考文献