研究

藤田医科大学、パーキンソン病の腸内細菌遺伝子「nanAkk」が病期進行に伴い段階的に増加すると発表

病気の克服を目指す研究動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 藤田医科大学の研究グループは、パーキンソン病患者の便中に含まれる腸内細菌Akkermansia(アッカーマンシア)由来の機能遺伝子「nanAkk」の量が、病気の進行度(重症度)の進行に伴い段階的に増加することを世界で初めて明らかにしたと発表した。

 実時間PCR(qPCR)法を用いた解析により、便中のnanAkk遺伝子量とパーキンソン病の重症度(Hoehn-Yahrステージ)との関連が確認されたとしている。研究成果は国際学術誌『Journal of Parkinson’s Disease』のオンライン版に2026年8月10日付で公開された。

nanAkk遺伝子量が重症度進行に伴い増加

 藤田医科大学の水谷泰彰助教、渡辺宜之教授らの研究グループは、パーキンソン病患者59人と、年齢や性別をそろえた健常者65人を対象に便サンプルを収集し、腸内細菌叢の網羅的解析(16S rRNAシーケンス)と、Akkermansia由来のnanAkk遺伝子を標的とした実時間PCR(qPCR)法による測定を行った。その結果、パーキンソン病患者の便中では健常者と比較してnanAkk量が有意に高いことが確認された。

 さらに、パーキンソン病の運動症状の重症度を示すHoehn-Yahr(HY)ステージが進行するにつれ、nanAkk量が段階的に増加する傾向が示された。特に病気が進行した段階(HYステージ4~5)の患者群は、初期から中期の段階(HYステージ1~3)の患者群と比較して、より高いnanAkk量を示したという。年齢、性別、服用薬剤などの要因を統計的に補正した解析でも、nanAkk量と重症度の相関は維持されており、研究グループはこの点について、病態を反映する信頼性の高い指標である可能性を示すものとしている。

腸内細菌と腸脳相関という背景

 パーキンソン病は、脳内のドーパミン産生神経細胞が減少することで、手足の震えや体の動きにくさ、姿勢反射障害などを引き起こす神経変性疾患である。厚生労働省の2020年の統計では、患者数は28万9000人と報告されており、高齢化の進展に伴いさらなる増加が想定されている。近年の研究では、この病気が脳だけでなく腸にも深く関わっていることが分かってきており、脳と腸が相互に影響を及ぼし合う「腸脳相関(gut-brain axis)」に注目が集まっているという。

 これまでの研究で、パーキンソン病患者の腸内では、腸の粘液層を分解する性質を持つ細菌「Akkermansia」が増加していることが複数報告されていた。しかし、従来の解析方法の多くは、腸内にどのような細菌が「いるか」(構成)を調べるものであり、実際に腸内でどのような機能(遺伝子)が働いているかを、患者ごとに簡便かつ低コストで評価する手法は確立されていなかった。研究グループは、Akkermansiaが腸の粘液(シアル酸)を分解・利用する際に必須となる遺伝子「nanAkk」に着目し、パーキンソン病の新たなバイオマーカーとしての可能性を検証した。

事実関係の整理

  • 情報の種類:研究発表(学術論文)
  • 発表元:藤田医科大学(水谷泰彰助教、渡辺宜之教授ら)
  • 対象:パーキンソン病患者59人、年齢・性別をそろえた健常者65人の便サンプル
  • 主要指標:Akkermansia由来nanAkk遺伝子量(qPCR法測定)、Hoehn-Yahrステージ
  • 主な結果:nanAkk量は患者群で健常群より高く、重症度進行に伴い段階的に増加
  • 掲載誌:Journal of Parkinson’s Disease(2026年8月10日オンライン公開)
  • 留意点:観察研究であり、nanAkk量と重症度の関連が示されたもので、因果関係を示すものではない

参考文献


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