研究

北里大学らがメンタルヘルス支援アプリ「ASHARE」の効果を検証、心理的苦痛の低減を確認

病気の克服を目指す研究動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 北里大学、産業医科大学、東京大学、労働安全衛生総合研究所の研究グループは、働く人の身体活動と心理的苦痛の状態を自動で推定・可視化するスマートフォンアプリ「ASHARE(アスハレ)」を開発し、その効果を無作為化比較試験で検証した。

 働く人793人を対象とした試験の結果、アプリを3カ月間使用した群は、ストレスに関する冊子を読んだ対照群と比較して心理的苦痛の得点が有意に低下したことが示された。一方で効果はわずかで、使用終了後には心理的苦痛の水準が試験開始時に戻ったことも報告されている。この研究成果は、2026年8月14日付で国際学術誌『Journal of Medical Internet Research』に掲載された。

アプリ使用群で心理的苦痛が有意に低下

 研究グループは、日本の働く人793人を対象に無作為化比較試験を実施した。参加者は、アプリ「ASHARE」を3カ月間使用する群(397人)と、ストレスに関する冊子を読む対照群(396人)に無作為に割り付けられた。3カ月後の調査では、アプリ使用群の心理的苦痛の得点が対照群と比較して0.56ポイント低下し、統計的に有意な群間差が確認された。

 試験開始時の心理的苦痛の水準で参加者を二分した解析では、心理的苦痛を測定する尺度「K6日本語版」の得点が5点未満だった人において、アプリ使用の効果がより大きく現れた。この群では、アプリを使用した場合に対照群と比較して3カ月後の心理的苦痛の増加が抑えられていた。

身体活動によるメンタルヘルス支援の位置づけ

 労働年齢人口の約15%がいずれかの時点で何らかの精神障害を抱えるとされ、明確な診断に至らずとも抑うつや不安、心理的苦痛を抱えながら働く人はさらに多いとされる。こうした状態は、休職や生産性低下のリスクにつながるとされている。身体活動・運動の促進は、薬物を用いない方法によるメンタルヘルス改善のアプローチの一つとして知られており、スマートフォンアプリなどを通じて個人の端末に健康支援を届けるモバイルヘルス(mHealth)も注目されてきた。

 もっとも、従来のmHealthに関する研究は、既に何らかの症状がある高リスク者を対象とした研究や、マインドフルネス・認知行動療法に基づく心理的アプローチの検証が中心であり、健康な働く人を含む集団を対象に身体活動習慣の維持・変容を支援するアプリの効果を厳密に検証する研究は限られていたとされる。今回の試験は、こうした状況の中で、受動的なモニタリング機能を持つアプリ単独の効果を無作為化比較試験という手法で検証したものと位置づけられる。

事実関係の整理

  • 情報の種類:研究発表(無作為化比較試験の結果)
  • 発表元:北里大学、産業医科大学、東京大学、労働安全衛生総合研究所の研究グループ
  • 対象:日本の働く人793人(アプリ使用群397人、対照群396人)
  • 主要指標:K6日本語版による心理的苦痛の得点、3カ月後の群間差0.56ポイント
  • 留意点:効果はわずかで、アプリ使用終了後は心理的苦痛が試験開始時の水準に戻り、身体活動水準の増加やメカニズムは明確になっていない

参考文献


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