研究

京都大学、小児の稀な肝腫瘍「肝未分化胎児性肉腫」が良性腫瘍から段階的に悪性化する遺伝子メカニズムを解明

病気の克服を目指す研究動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 京都大学大学院医学研究科の滝田順子教授、内原嘉仁助教らの研究グループが、小児の稀な肝臓の腫瘍「肝未分化胎児性肉腫」について、良性腫瘍「肝間葉性過誤腫」から段階的に悪性化していく詳しいしくみを明らかにした。

 全ゲノムシークエンス解析により、両者が共通して19番染色体上のC19MC領域の構造異常を持つことを確認し、TP53遺伝子の異常が新たに加わることで悪性化が進むことを突き止めた。あわせて、リキッドバイオプシーの技術を用いた診断精度の向上や治療効果判定への応用可能性も示された。

良性腫瘍から悪性腫瘍へ、共通の遺伝子基盤と追加変化を確認

 京都大学の滝田順子教授、内原嘉仁助教、福井大学の梅田雄嗣教授、静岡県立こども病院の田坂佳資医長らが中心となり、認定特定非営利活動法人日本小児がん研究グループ(JCCG)肝腫瘍委員会の協力を受けて実施した研究では、小児の稀な肝臓の腫瘍である肝未分化胎児性肉腫と、その前段階と考えられる良性腫瘍の肝間葉性過誤腫を対象に全ゲノムシークエンス解析を行った。

 その結果、両者は共通して19番染色体上のC19MC領域の構造異常を有していることが確認された。さらに、肝未分化胎児性肉腫ではこれに加えてTP53遺伝子の異常が新たに獲得されており、この遺伝子変化の追加が段階的な悪性化に関与していることが示された。

 研究グループはまた、患者への身体的負担が少ないリキッドバイオプシーの技術を用いることで、これまで診断が困難であったこれらの稀な肝臓の腫瘍について、診断精度を高め、治療効果判定に利用できる可能性があることを確認した。

希少な小児肝腫瘍の診断における位置づけ

 肝未分化胎児性肉腫は小児に発生する稀な肝臓の悪性腫瘍であり、良性腫瘍である肝間葉性過誤腫との関連が指摘されてきたものの、両者の間でどのような遺伝子変化が段階的な悪性化に関わっているかは明らかになっていなかった。稀少な疾患であることから症例数の確保が難しく、詳細な遺伝子解析には全国規模での検体収集や共同研究体制が必要とされていた。

 今回の研究は、日本小児がん研究グループ肝腫瘍委員会のサポートのもとで実施され、複数の医療機関から提供された検体を用いて全ゲノムシークエンス解析が行われた。良性腫瘍と悪性腫瘍に共通する遺伝子基盤としてC19MC領域の構造異常が確認されたことは、両者が発生学的に関連していることを示す一つの根拠として位置づけられる。

 あわせて検討されたリキッドバイオプシーの技術は、腫瘍組織の直接採取が難しい場合や、繰り返しの評価が必要な治療経過の観察において、血液など体への負担が少ない検体から遺伝子情報を得る手法として位置づけられている。

事実関係の整理

  • 情報の種類:研究発表(学術論文)
  • 発表主体:京都大学大学院医学研究科(滝田順子教授、内原嘉仁助教)、福井大学(梅田雄嗣教授)、静岡県立こども病院(田坂佳資医長)ら、日本小児がん研究グループ(JCCG)肝腫瘍委員会の協力による
  • 対象:肝未分化胎児性肉腫と肝間葉性過誤腫の患者検体
  • 主要な手法・指標:全ゲノムシークエンス解析、C19MC領域の構造異常、TP53遺伝子異常、リキッドバイオプシー
  • 掲載誌:『npj Precision Oncology』(2026年7月14日オンライン掲載)

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