研究

QSTなど、中高年発症の幻覚・妄想にタウ病変が高頻度で関与することをPET検査で確認

病気の克服を目指す研究動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 量子科学技術研究開発機構(QST)、慶應義塾大学、京都大学、東京科学大学の研究グループは、国立病院機構下総精神医療センターなどと共に、中高年で初めて幻覚や妄想などの精神症状を発症した患者の脳内に、認知症の原因となるタウタンパク質(以下、タウ)の病変が多様な形で蓄積していることをPET検査により確認したと発表した。

 40歳以降に精神症を発症した患者37名を対象に調べたところ、約65%でタウ病変が認められ、健常対照者の約15%と比べて高い割合となった。アルツハイマー病型と非アルツハイマー病型がほぼ半数ずつみられ、精神症の背景に多様な神経変性が関与している可能性が示された。

患者の約65%でタウ病変を確認

 研究グループは、QSTが開発したPET薬剤florzolotau(18F)を用い、40歳以降に発症した精神症の患者37名を対象に検査を実施した。florzolotauは、様々な認知症や関連疾患におけるタウ病変を感度良く捉えることができるPET薬剤とされる。

 検査の結果、タウ病変が認められたのは健常対照者では約15%にとどまったのに対し、患者では約65%にのぼった。また、タウ病変が認められた患者の中では、アミロイドβの蓄積が認められる方(アルツハイマー病型)と認められない方(非アルツハイマー病型)がほぼ半数ずつみられた。さらに、アミロイドβの蓄積が認められた例では、タウ病変が多いほど実行機能(計画性や注意力の制御)が低下していることが確認され、タウ病変と実際の認知機能との関連も示された。

中高年発症の精神症をめぐる背景

 幻覚や妄想などの精神症状は統合失調症などの病気でみられ、典型的には思春期や青年期に発症する。一方で、中高年期に初めて発症するケースも少なくないとされる。こうした方々は必ずしも受診につながらないことも多く、実際に治療を受けているのは4分の1程度に過ぎないとの報告もあり、地域社会に未診断・未治療のまま生活している方々も少なくないと考えられている。

 中高年期に初めて幻覚や妄想などを呈する精神症(統合失調症や妄想症を含む)は、若年発症例とは症状の現れ方が大きく異なることが知られており、過去の疫学研究や死後脳を用いた研究から、認知症の前段階である可能性が指摘されていた。しかし、これまで生体内でその原因となる異常タンパク質の蓄積を証明した研究は極めて限定的であり、これは異常タンパク質を正確に定量・可視化する技術が限られていたことによるとされる。今回の成果は、こうした課題に対し、国内で開発されたPET技術を用いて生体脳での実証を試みたものである。

事実関係の整理

  • 発表主体:量子科学技術研究開発機構(QST)、慶應義塾大学、京都大学、東京科学大学の研究グループ、国立病院機構下総精神医療センターなど
  • 対象:40歳以降に発症した精神症の患者37名、健常対照者
  • 使用技術:PET薬剤florzolotau(18F)によるタウ病変の可視化
  • 主要結果:患者の約65%、健常対照者の約15%にタウ病変を確認。タウ病変陽性患者はアルツハイマー病型・非アルツハイマー病型がほぼ半数ずつ
  • 関連知見:アミロイドβ蓄積例において、タウ病変量と実行機能低下との関連を確認
  • 発表媒体:『Molecular Psychiatry』オンライン版、2026年8月3日掲載

参考文献


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