京都大学がSLF2・SMC5遺伝子異常を骨髄不全症・骨髄異形成症候群の原因遺伝子として提唱、患者iPS細胞で病態再現
京都大学などの研究グループが、SLF2遺伝子およびSMC5遺伝子の先天的な異常が、遺伝性骨髄不全症および骨髄異形成症候群(MDS)の発症に関与することを明らかにした。
患者由来のiPS細胞を用いた解析により、これらの遺伝子異常が造血幹細胞の早期老化を介した造血障害を引き起こす仕組みが示され、ゲノム編集による遺伝子修復で異常が改善することも確認された。
患者由来iPS細胞で病態を再現、新たな原因遺伝子を確認
京都大学大学院医学研究科の柴田翔研究員、蝶名林和久助教(同研究科、iPS細胞研究所(CiRA)臨床応用研究部門)、吉田善紀准教授(CiRA臨床応用研究部門)、自治医科大学小児科の翁由紀子講師、横浜市立大学大学院医学研究科の内山由理講師、松本直通教授、京都大学大学院医学研究科の高折晃史教授らの研究グループは、SLF2遺伝子およびSMC5遺伝子の生まれつきの異常が、遺伝性骨髄不全症および骨髄異形成症候群(MDS)の発症に関与することを報告した。
研究グループは、SLF2遺伝子およびSMC5遺伝子に異常をもつ患者の臨床情報を解析し、複数の患者が若年でMDSを発症していたことを確認した。さらに患者由来のiPS細胞を用いた解析により、これらの遺伝子異常がDNA損傷応答を活性化し、造血幹細胞の早期老化を介した造血障害を引き起こすことを示した。加えて、ゲノム編集によって患者由来iPS細胞の遺伝子異常を修復したところ、これらの異常が改善したことが確認された。
若年発症例の原因解明が診断・治療方針に関わる位置づけ
骨髄不全症は、血液をつくる骨髄の働きが低下し、血液細胞を十分につくれなくなる病気である。一方、MDSは骨髄で異常な血液細胞がつくられ、正常な血液細胞を十分につくれなくなる血液がんの一種として位置づけられる。若年でこれらの疾患を発症する患者では、生まれつきの遺伝子異常が背景にある場合があり、原因となる遺伝子を明らかにすることは、診断や治療方針の決定に関わる要素として捉えられている。
今回の成果は、これまで原因不明とされてきた若年発症例の理解を深める一つの知見として位置づけられ、骨髄不全症やMDSの病態解明や、今後の治療法開発に関連する研究として整理される。本研究成果は、2026年8月7日午前1時(英国時間)に国際学術誌『Leukemia』にオンライン掲載された。
事実関係の整理
- 情報の種類:研究発表(学術論文)
- 発表主体:京都大学大学院医学研究科・iPS細胞研究所(CiRA)、自治医科大学、横浜市立大学大学院医学研究科の共同研究グループ
- 対象:SLF2遺伝子およびSMC5遺伝子に異常をもつ患者、患者由来iPS細胞
- 主要手法:患者臨床情報の解析、患者由来iPS細胞の解析、ゲノム編集による遺伝子修復実験
- 主要結果:DNA損傷応答の活性化を介した造血幹細胞の早期老化、遺伝子修復による異常の改善
- 掲載誌:国際学術誌『Leukemia』(2026年8月7日オンライン掲載)
参考文献