金沢大学が膠芽腫幹細胞に効果を示す既存薬ロメリジンを同定、マウスで生存期間延長を確認
金沢大学の研究グループは、悪性脳腫瘍「膠芽腫」の再発や治療抵抗性に関わるとされる膠芽腫幹細胞を標的とする薬剤として、片頭痛予防薬のロメリジンを同定したと発表した。
1301種類の既存薬物から膠芽腫幹細胞株に強い抗腫瘍効果を示す薬剤を選び出すドラッグ・リポジショニングの手法を用い、細胞実験とマウスモデルの両方で効果を確認したとしている。
既存薬ロメリジンに膠芽腫幹細胞への抗腫瘍効果を確認
金沢大学附属病院脳神経外科の一ノ瀨惇也助教、同大医薬保健研究域医学系の三枝理博教授、がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)の平尾敦教授、同大医薬保健研究域医学系脳神経外科学の中田光俊教授らの研究グループは、1301種類の既存薬物を対象に膠芽腫幹細胞株への効果を調べ、片頭痛予防薬として使用されているロメリジンが強い抗腫瘍効果を示したと発表した。研究グループによると、ロメリジンは膠芽腫細胞株全般に対してSTAT3を抑制し、膠芽腫幹細胞株に対してはさらにAKTとERKを抑制したという。あわせて、膠芽腫幹細胞株において優位にアポトーシスを誘導し、細胞の増殖、浸潤、遊走、腫瘍形成をそれぞれ阻害したことが確認されたとしている。膠芽腫幹細胞株を脳内に移植したマウスモデルでは、ロメリジンを内服させたところ腫瘍の増大が抑制され、生存期間が延長したことも示されたという。
膠芽腫幹細胞と既存薬活用の位置づけ
膠芽腫は、脳のグリア細胞から発生する悪性度の高い脳腫瘍で、手術、放射線治療、化学療法を組み合わせた治療が行われているものの、2年生存率は50%以下にとどまるとされる。膠芽腫細胞の中には、自己複製能力と多様な細胞への分化能力を持つ膠芽腫幹細胞と呼ばれる特殊な細胞が存在し、抗がん剤や放射線治療への抵抗性を有するため、再発や進行の主な原因の一つと考えられている。このため、膠芽腫幹細胞を標的とする治療法は、これまで確立されたものが存在しないとされる。
今回用いられたドラッグ・リポジショニングは、既に承認され臨床で使用されている薬剤や開発中の化合物を、当初想定されていた疾患とは異なる疾患の治療に転用する手法である。新規薬剤の開発には10年を超える期間と数百億円規模の費用がかかるとされる一方、この手法では対象薬剤の安全性や体内動態が既に確認されているため、開発に要する時間や費用を抑えられる可能性があるとされる。ロメリジンは、T型カルシウムチャネルを阻害することで脳血管の異常な興奮や収縮を抑える薬剤として、日本で片頭痛予防薬として使用されてきた経緯がある。
事実関係の整理
- 情報の種類:基礎研究(細胞実験・動物実験)
- 発表主体:金沢大学(附属病院脳神経外科、医薬保健研究域医学系、がん進展制御研究所、ナノ生命科学研究所〈WPI-NanoLSI〉)
- 対象:膠芽腫幹細胞株、脳腫瘍マウスモデル
- 主要結果:ロメリジンによるSTAT3・AKT・ERK抑制、アポトーシス誘導、細胞増殖・浸潤・遊走・腫瘍形成の阻害、マウスモデルでの腫瘍増大抑制と生存期間延長
- 留意点:現時点では細胞実験と動物モデルによる基礎研究段階であり、患者を対象とした臨床試験の結果は示されていない
参考文献