神戸大学がICG蛍光ガーゼ「トロックスICG」を産学連携で発売──鏡視下手術のガーゼ遺残対策を整理
国立大学法人神戸大学大学院医学研究科外科学講座肝胆膵外科学分野は、株式会社ヴィータおよびオオサキメディカル株式会社と共同で、鏡視下手術用の「ICG蛍光ガーゼ」(製品名:トロックスICG)を開発し、発売および臨床使用を開始したと発表した。
インドシアニングリーン(ICG)による蛍光を利用してガーゼの視認性を高める製品で、腹腔鏡手術やロボット支援下手術における体内でのガーゼ紛失・遺残リスクの低減を目指すものとして説明されている。
産学連携による鏡視下手術用ICG蛍光ガーゼの発売
神戸大学肝胆膵外科(教授:福本巧)は、ヴィータ(代表取締役:土田忍)およびオオサキメディカル(代表取締役社長:大崎将男)と共同で、鏡視下手術における体内へのガーゼ紛失・遺残リスクの低減を目的とした「ICG蛍光ガーゼ」(製品名:トロックスICG)を開発し、発売したと発表した。神戸大学医学部附属病院をはじめとする医療機関で、症例ごとの適応を検討しながら臨床使用が開始されているとしている。
トロックスICGは、近赤外線領域で蛍光を発するICGと、既に医療現場で使用されているICG蛍光観察対応の近赤外光イメージング搭載内視鏡システムを組み合わせ、術野でガーゼの位置を蛍光により確認できるようにした製品であると説明されている。製品ラインナップは、3センチメートル×15センチメートルの4プライ規格と、5センチメートル×7センチメートルの8プライ規格の2種類で、いずれもX線不透過マーカーが付いているとしている。
鏡視下手術の普及とガーゼ遺残への対応という背景
腹腔鏡手術やロボット支援下手術に代表される鏡視下手術は、患者への侵襲が小さいことから普及が進んでいるとされる。一方で、限られた視野での操作により、ガーゼが周囲の臓器や組織の背面に隠れたり、出血を吸収して周辺の血液や凝血塊と区別がつきにくくなったりすることで紛失しやすいことが課題として挙げられている。ガーゼの位置確認や探索にはレントゲン撮影など放射線被ばくを伴う確認作業を要する場合もあり、患者および医療スタッフの負担につながるとされている。
神戸大学肝胆膵外科とヴィータは、こうした課題への対応として、蛍光によりガーゼの位置を可視化する取り組みを進めてきたと説明している。2025年3月には、医療用蛍光造影剤であるICGを用いて近赤外光下で蛍光を発するガーゼを作製し、その視認性や有用性を評価した基礎研究の成果を国際学術誌『Scientific Reports』に報告している。同研究では、大動物の腸間膜を数枚程度透過して蛍光を確認できることが示され、腹腔内でのガーゼ紛失・遺残の防止に寄与しうる可能性が示されたとしている。今回の製品化は、この知見を医療用ガーゼメーカーであるオオサキメディカルとの共同開発により実際の製品へと発展させたものと位置づけられている。なお、神戸大学大学院医学研究科医療創成工学専攻および医療機器社会実装支援ユニットが、開発および産学連携に関する伴走支援を行ったとしている。
事実関係の整理
- 情報の種類:産学連携による医療機器製品の開発・発売発表
- 公表元:神戸大学(肝胆膵外科学分野)、株式会社ヴィータ、オオサキメディカル株式会社
- 製品名:トロックスICG(鏡視下手術用ICG蛍光ガーゼ)
- 製品規格:ⅡーAタイプ(3㎝×15㎝、4ply、5枚入×20袋)、ⅡーBタイプ(5㎝×7㎝、8ply、2枚入×20袋)
- 関連基礎研究:『Scientific Reports』2025年3月25日掲載(15巻1号、10189)
- 今後の予定:臨床データの蓄積による有用性検証、開腹手術や消化器外科以外の分野への展開の検討
参考文献
神戸大学ニュースサイト「鏡視下手術用「ICG蛍光ガーゼ」を産学連携で共同開発・製品化」
https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/20251208-67359/