研究

藤田医科大学がHFpEFの突然死機序を解明──心停止型が過半数、予測因子を整理

病気の克服を目指す研究動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 藤田医科大学ばんたね病院循環器内科の祖父江嘉洋准教授らの研究グループは、心不全患者2331例の前向きデータをもとに、左室駆出率が保たれた心不全「HFpEF(Heart Failure with Preserved Ejection Fraction)」における突然死の発症機序と危険因子を解析した。

 その結果、HFpEFで生じる突然死の半数以上が、致死性心室不整脈ではなく心停止(asystole)を伴う形で発症していることが示された。あわせて、NYHA心機能分類クラスIIIとQTc延長(≧480ms)が、HFpEFにおける突然死の独立した予測因子として抽出されたという。

HFpEF患者の突然死、半数以上が心停止型と判明

 藤田医科大学病院に入院した心不全患者2331例を対象に、退院後25カ月(中央値)の予後を追跡した前向き研究が行われた。左室駆出率に基づきHFrEF(左室駆出率が低下した心不全)、HFmrEF(左室駆出率が軽度低下した心不全)、HFpEFの3群に分類し、突然死の発生状況を救急搬送時の心電図や植込み型除細動器(ICD)の作動記録、家族からの情報などを総合して判定した。

 解析の結果、HFpEFにおける突然死の発生率は5.9%と他の心不全群より低い一方、突然死が生じた場合にはその半数以上が心室頻拍・心室細動ではなく心停止(asystole)を伴う形で発症していたことが示された。これはHFrEFやHFmrEFで見られる死亡プロファイルとは異なるものであったという。多変量解析では、NYHA心機能分類クラスIIIと、心電図上のQTc延長(≧480ms)が、HFpEFにおける突然死の独立した予測因子として抽出された。

心不全表現型別の突然死研究における位置づけ

 心不全は主要な死亡原因の一つであり、心臓突然死はその中でも重要な臨床アウトカムとされてきた。従来の心臓突然死研究は、左室駆出率が低下したHFrEFを中心に進められており、致死性心室不整脈の関与や、ICDによる予防効果についての知見が積み重ねられてきた。一方、近年患者数が増加しているHFpEFは、高齢や高血圧、肥満、糖尿病といった背景疾患を伴う複雑な病態でありながら、心臓突然死の実態については十分に解明されていない領域であったとされる。

 心臓突然死には、心室頻拍・心室細動による致死性不整脈のほか、徐脈性の心停止(asystole)や原因不明の突然死など複数の機序が想定される。QTc延長や性別、心房細動、腎機能などがリスク因子として指摘されてきた一方、機序別に突然死を分類したうえで前向きに検討した大規模研究は限られていたという。今回の研究は、非突然死を競合リスクとして扱う統計手法(cumulative incidence function、Cause-specific Cox解析、Fine–Grayモデル)を用いて表現型別の死亡機序を比較したものであり、HFpEFに特有の突然死リスクを整理する試みとして位置づけられる。

事実関係の整理

  • 情報の種類:臨床研究(前向きコホート研究)
  • 発表元:藤田医科大学ばんたね病院 循環器内科(祖父江嘉洋准教授ら)
  • 対象:心不全患者2331例(HFrEF/HFmrEF/HFpEFの3群に分類)
  • 主要指標:突然死発生率、心停止(asystole)の割合、NYHAクラス、QTc延長(≧480ms)
  • 掲載誌:『Scientific Reports』(Nature Portfolio、2025年10月23日号、オンライン版2025年9月26日公開)
  • 留意点:観察研究であり、示された関連は因果関係を直接示すものではない

参考文献


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