研究

藤田医科大学がストレス下の甘味摂取とうつ病態の関連を発表──性差と糖代謝の関与を整理

病気の克服を目指す研究動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 藤田医科大学の研究グループは、健康診断受診者を対象にした食事調査データの解析と、ストレスを負荷したマウスを用いた実験を組み合わせ、甘味摂取とうつ病態の関係を検討した結果を発表した。

 健診データでは抑うつ症状が強い群で砂糖摂取量が多い傾向が示された一方、マウス実験ではストレス下での砂糖摂取がオスとメスで異なる方向にうつ様行動を変化させることが確認され、その背景に糖代謝とノルアドレナリン神経系の関与が示唆されたという。

甘味摂取とうつ病リスクの関連を健診データとマウス実験の両面から確認

 藤田医科大学医療科学部の毛利彰宏教授らの研究グループは、松波総合病院、筑波大学との共同研究として、健康診断受診者2840人分の食事調査データを解析し、抑うつ症状の強さと食習慣の関連を検討した。食事内容は質問票(BDHQ)、抑うつ症状は尺度(CES-D)で評価され、CES-Dが16以上の受診者555人を「抑うつ症状が強い群」、残る2285人を対照群として比較したところ、抑うつ症状が強い群では洋菓子などの摂取が多く、スクロース(砂糖)の摂取量が多いことが示された。

 これを踏まえ、雄・雌のICRマウスに4週間の慢性予測不能軽度ストレス(CUMS)を負荷し、30%濃度のスクロース溶液を飲水として与えたうえで、活動量・社会性行動・絶望様行動・記憶に関する試験を実施した。その結果、オスでは砂糖摂取によりストレスに伴う過活動や攻撃性が一部軽減した一方、社会性の低下や絶望様行動は改善されず、記憶機能の低下が認められた。これに対しメスでは、砂糖摂取により社会性の低下が軽減されるなど、オスとは異なる変化が確認されたと発表している。

糖代謝とノルアドレナリン神経系の関与という背景

 うつ病は症状や原因が患者によって異なり、同じ診断であっても治療への反応に差が生じることが知られている。一方でストレス下では甘味を求める傾向がみられるものの、うつ病リスクと甘味摂取の関連や、ストレス下での砂糖摂取が脳の働きと糖代謝をどのように変化させ、うつ病態につながるのかについては、これまで十分に分かっていなかったとされる。

 研究グループは、行動変化の背景を明らかにするため、脳内の神経機能と糖代謝を解析した。その結果、ストレス下での砂糖摂取により、意思決定や感情制御に関わる前頭前皮質でノルアドレナリン系の代謝回転や受容体発現に変化が生じることが示された。また、血糖値やストレスホルモンであるコルチコステロンなどの末梢指標、および前頭前皮質の代謝物解析から、オスでは血糖値が十分に低下せず高血糖状態が持続するとともに、脳内の糖代謝が乱れ、酸化ストレスに関連する変化を伴うことが示唆された。一方でメスでは、オスで認められたような高血糖やα2アドレナリン受容体の増加は認められず、性差の背景として糖代謝異常の有無の違いが関与する可能性が示されたという。

 さらに、α2アドレナリン受容体を遮断する薬剤(ミルタザピン、アチパメゾール)を用いた実験では、ストレス下の砂糖摂取によって生じた行動異常が改善したことが報告されている。研究グループは、これらの結果について、食習慣や代謝状態の違いに基づく「うつ病のサブタイプ」の存在を示唆するものであり、砂糖摂取が多く糖尿病を併発するうつ病患者においてα2アドレナリン受容体を標的とした治療が有効となる可能性があると説明している。

事実関係の整理

  • 情報の種類:健診データの疫学的解析およびマウスを用いた基礎研究
  • 公表元:藤田医科大学(松波総合病院、筑波大学との共同研究)
  • 対象:健康診断受診者2840人(抑うつ症状が強い群555人、対照群2285人)、および慢性ストレス負荷下のオス・メスのICRマウス
  • 主要指標:スクロース摂取量、抑うつ症状評価尺度(CES-D)、社会性行動・絶望様行動・記憶に関する試験、前頭前皮質のノルアドレナリン系機能、血糖値・コルチコステロン値
  • 留意点:マウスで確認された行動変化は「うつ様行動」として評価されたものであり、ヒトのうつ病そのものを再現するものではなく、臨床的な治療効果が示されたものではない

参考文献


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