研究

国立健康危機管理研究機構が血中重金属濃度と2型糖尿病発症の関連に関する研究を発表──水銀との関連を整理

グローバル医療と社会の関係をテーマに、タブレット端末を操作する医療従事者のイメージ

 国立健康危機管理研究機構(Japan Institute for Health Security、JIHS)臨床研究センターは2026年2月3日、日本人勤労者を対象に血中重金属濃度と2型糖尿病発症との関連を調べた研究結果を公表した。

 カドミウム、水銀、鉛、ヒ素の4種類の重金属について血中濃度を分析した結果、血中水銀濃度が最も高い群では、最も低い群と比べて2型糖尿病を発症するリスクが約2倍高かったと報告している。一方、カドミウム、鉛、ヒ素については、2型糖尿病との明らかな関連は認められなかったとしている。

血中水銀濃度と2型糖尿病発症の関連が示された

 国立健康危機管理研究機構臨床研究センターは、日本人勤労者を対象としたコホート内症例対照研究により、血中のカドミウム、水銀、鉛、ヒ素の4種類の重金属濃度と2型糖尿病の発症との関連を分析した。この手法は、追跡対象となる集団(コホート)の中から、実際に疾患を発症した人と、発症していない人を条件をそろえて比較する研究デザインであり、血液など生体試料をあらかじめ保存しておくことで、発症前の曝露状況を後から評価できる点に特徴がある。

 分析の結果、血中水銀濃度が最も高い群は、最も低い群と比べて2型糖尿病を発症するリスクが約2倍高かったと報告されている。一方、カドミウム、鉛、ヒ素の血中濃度については、2型糖尿病発症との明らかな関連は認められなかったとしている。同機構は、水銀の主な摂取源として魚介類などの食事由来の曝露が想定されるとしつつ、今回の研究では曝露経路そのものを直接特定したものではないと位置づけている。

重金属曝露と生活習慣病研究の位置づけ

 カドミウム、水銀、鉛、ヒ素は環境中に広く存在する重金属であり、食事や大気、職業曝露など複数の経路を通じて人体に取り込まれることが知られている。これらの物質については、腎機能や神経系への影響を中心に健康影響が研究されてきた経緯があるが、2型糖尿病のような生活習慣病との関連については、国内外の疫学研究において一致した知見が十分に蓄積されているとは言えない状況にあった。

 今回の研究は、日本人勤労者という特定の集団を対象に、複数の重金属を同時に測定し、発症の有無で比較する設計を採用した点に特徴がある。単一の物質だけでなく、カドミウム、水銀、鉛、ヒ素をあわせて評価することで、特定の物質固有の関連なのか、あるいは重金属曝露全般に共通する傾向なのかを区別しやすくする狙いがあると位置づけられる。血中水銀濃度についてのみ関連が示された今回の結果は、こうした複数物質を対象とした比較の中で得られた知見として整理できる。

事実関係の整理

  • 情報の種類:疫学研究(コホート内症例対照研究)
  • 公表元:国立健康危機管理研究機構 臨床研究センター
  • 公表日:2026年2月3日
  • 対象:日本人勤労者
  • 分析対象物質:カドミウム、水銀、鉛、ヒ素の血中濃度
  • 主な結果:血中水銀濃度が最も高い群は最も低い群と比べて2型糖尿病発症リスクが約2倍
  • 関連が認められなかった物質:カドミウム、鉛、ヒ素
  • 留意点:観察研究であり、水銀曝露と2型糖尿病発症との因果関係を直接示すものではない

参考文献

国立健康危機管理研究機構「カドミウム、水銀、鉛、ヒ素の血中濃度と2型糖尿病リスク ― 日本人勤労者におけるコホート内症例対照研究 ―」
https://ccs.jihs.go.jp/news/010/20260130103014.html


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