京都大学がベネトクラクスの血中濃度と副作用の関連を発表──白血病治療の投与設計を整理
京都大学の研究グループは、急性骨髄性白血病(AML)の治療に用いられる薬剤ベネトクラクス(VEN)について、血中濃度が副作用の発症率に影響を与えることを明らかにした。
152例の患者データを解析した結果、血中濃度が高いほど重篤な血液毒性の発症率が高くなる傾向が示された一方、治療効果との関連は限定的であったことも報告している。研究成果は、治療薬物モニタリング(TDM)を活用した個別化医療を検討する際の材料になり得るとしている。
血中濃度が高いほど血液毒性の発症率が上昇
研究グループは、AML患者152例のデータを対象に、VENの血中トラフ濃度と治療経過の関係を解析した。その結果、血中トラフ濃度が高い患者群では、重篤な好中球減少症をはじめとする血液毒性の発症率が有意に高く、血液毒性が生じる頻度が高い傾向にあることが示された。
一方、血中濃度と生存率・寛解率といった治療効果との関係については、患者集団全体では明確な相関は認められなかった。ただし、これまで治療を受けていない未治療患者に限って見ると、血中濃度と寛解率との間に関連が認められたと報告している。
AML治療におけるVENの位置づけと個体差の課題
VENとアザシチジンの併用療法は、高齢であることや全身状態の理由から強力な化学療法を受けることが難しいAML患者に対し、近年広く用いられている標準的な治療の一つである。一方で、VENの血中濃度には患者間で大きな個体差があることが知られており、副作用である血球減少症の管理が臨床上の課題として指摘されてきた。
こうした背景のもと、林裕美 医学研究科客員研究員、諫田淳也 同講師、髙折晃史 同教授、山際岳朗 医学部附属病院薬剤主任、中川俊作 同准教授、寺田智祐 同教授、米澤淳 慶應義塾大学教授らの研究グループは、実際の臨床データを用いてVENの血中濃度と安全性・有効性の関係を検証した。研究グループは、薬物の血中濃度を測定しながら投与量を調整する治療薬物モニタリング(TDM)の枠組みを念頭に、血中濃度に応じた投与設計の検討材料を示す形で今回の成果をまとめている。林と諫田は、血中濃度は高ければ良いというものではなく、その特性を踏まえて患者ごとに投与量を検討することが今後の課題になるとの考えを示している。
事実関係の整理
- 情報の種類:臨床研究(後方視的解析)
- 公表元:京都大学(研究グループには慶應義塾大学の研究者も参加)
- 対象:VEN投与を受けたAML患者152例
- 主要指標:VENの血中トラフ濃度(Ctrough)、血液毒性(好中球減少症等)の発症率、生存率・寛解率
- 留意点:血中濃度と治療効果の関連は未治療患者に限定して認められており、全体集団では明確な相関は示されていない
参考文献