研究

富山大学が十全大補湯による免疫チェックポイント阻害薬の効果増強を発見──マウスがんモデルでの機序を整理

病気の克服を目指す研究動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 富山大学の研究グループは、漢方薬の十全大補湯を併用投与することで、免疫チェックポイント阻害薬(ICBs)である抗PD-1抗体の治療効果がマウスがんモデルにおいて増強されることを明らかにした。

 株式会社ツムラとの共同研究によるもので、十全大補湯投与により腸内細菌叢の変化の抑制や、がん免疫応答を抑制的に制御する制御性T細胞(Treg)の増加抑制、がん細胞を攻撃するCD8+T細胞の活性化亢進といった変化が確認されたと発表している。

十全大補湯併用でマウスの抗腫瘍免疫応答に変化

 富山大学学術研究部薬学・和漢系の早川芳弘教授、総合医薬学研究科(博士課程)の山口叶大大学院生、学術研究部医学系の小林栄治教授らの研究グループは、株式会社ツムラとの共同研究として、マウスがんモデルを用いた実験を行った。抗PD-1抗体を用いたICBs治療に十全大補湯を併用投与したところ、単独投与時と比較して治療効果が増強される結果が得られたと発表している。

 具体的には、担がんマウスにおいてICBs治療にともなう病態進展の過程で認められる腸内細菌叢とその代謝物産生の変化が、十全大補湯の併用により抑制される傾向が示された。また、がん免疫応答を抑制的に制御する制御性T細胞(Treg)の増加が抑えられる一方、がん細胞を攻撃するCD8+T細胞の活性化が高まる傾向が確認されたとしている。

免疫チェックポイント阻害薬と漢方薬「補剤」の位置づけ

 免疫チェックポイント阻害薬(ICBs)は、がん細胞を攻撃する免疫細胞へのブレーキを解除する薬剤として、抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体などが様々ながん腫の治療に用いられてきた。長期にわたる病勢のコントロールを含め高い有効性が示されてきた一方で、臨床での奏効率には限界があるとされ、既存治療の抗腫瘍効果を高める複合的な治療法の開発が進められている。

 十全大補湯は、漢方医学における「気」と「血」を補う気血両補剤に位置づけられる代表的な処方であり、体力虚弱な者の疲労倦怠や食欲不振、病後・術後の体力低下などへの適応がある。がん患者においては、術前術後の体力回復や食欲不振の改善、化学療法・放射線療法にともなう副作用の低減や予防、緩和ケアなどを目的として用いられることがあり、免疫調節作用に関する薬理学的な報告も存在する。今回の研究は、こうした補剤の機能がICBs治療の効果とどのように関わり得るかを、マウスモデルという実験系の中で確認したものである。

事実関係の整理

  • 発表元:富山大学(学術研究部薬学・和漢系、総合医薬学研究科、学術研究部医学系)、共同研究先は株式会社ツムラ
  • 対象:マウスがんモデル(担がんマウス)における抗PD-1抗体と十全大補湯の併用投与
  • 主な確認事項:腸内細菌叢と代謝物産生の変化の抑制、制御性T細胞(Treg)の増加抑制、CD8+T細胞の活性化亢進
  • 掲載誌:『Journal of Natural Medicine』、2026年2月3日オンライン公開
  • 資金支援:ツムラからの共同研究費、科学技術振興機構「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)」(JPMJSP2145)
  • 留意点:今回の結果はマウスを用いた動物実験によるものであり、ヒトでの効果を確認する臨床研究は今後の課題として位置づけられている

参考文献

富山大学 プレスリリース「漢方薬の十全大補湯が免疫チェックポイント阻害薬によるがん治療効果を増強することを発見」
https://www.u-toyama.ac.jp/news-press/129151/


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