大阪公立大学がピロリ菌とは異なる新種細菌を特定──「Streptococcus mobilis」命名の根拠を整理
大阪公立大学大学院獣医学研究科と大阪国際感染症研究センターの研究グループは、ピロリ菌とは異なる新種の細菌を特定し、Streptococcus mobilis(ストレプトコッカス モビリス)と命名したと発表した。
本菌は、ピロリ菌陽性の胃の前がん病変から2010年に分離されていたもので、生化学的性状解析と全ゲノム配列解析により、Streptococcus属の既知菌種のいずれにも一致しない新菌種であることが明らかになったと説明している。
新種細菌「Streptococcus mobilis」の特定
本研究グループは、オーストラリアの岡田隆幸医師がピロリ菌陽性の日本人女性患者の胃の前がん病変から2010年に分離した細菌について、生化学的性状解析および全ゲノム配列解析を実施したと発表した。系統解析ではStreptococcus parasanguinisが近縁と考えられたが、遺伝的類似性を示すANI(平均塩基配列同一性)は94.4%で、同一種と判断する基準とされる95〜96%を下回ったと説明している。
また、従来法のDDH(DNA-DNAハイブリダイゼーション)およびデジタルDDHによる解析でも、それぞれ62.5%と58.7%にとどまり、同一種の目安とされる70%を下回ったことから、本菌はStreptococcus属の既知菌種のいずれにも属さない新菌種と結論づけられたとしている。本菌は鞭毛を持たないにもかかわらず運動性を示したことから、菌種名にmobilisを採用したと説明している。研究成果は2026年1月12日に『International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology』にオンライン掲載された。
ピロリ菌研究における位置づけ
胃潰瘍や胃がんの原因としては、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の関与が広く知られている。一方で、ピロリ菌単独ですべての病態を説明できるのかという点について疑問を持つ医師・研究者が近年増えているとされ、今回同定された細菌も、こうした議論の中で20年以上前から分離・保管されてきた経緯があるという。
研究グループは、全ゲノム配列が明らかになったことで、本菌に特異的な検査法の開発が可能になったと説明している。今後、こうした検査法を用いて動物における感染源の有無や、胃潰瘍・胃がん患者の胃検体からの検出状況を調べることが想定されているとしている。研究は、さくらコーポレーションの支援を受けて実施されたという。
事実関係の整理
- 情報の種類:研究論文(微生物分類学)
- 公表元:大阪公立大学大学院獣医学研究科/大阪国際感染症研究センター
- 対象:ピロリ菌陽性の胃の前がん病変から分離された細菌
- 主要指標:ANI 94.4%、DDH 62.5%、デジタルDDH 58.7%
- 留意点:胃潰瘍・胃がんとの関連は、今後の検査法開発と検体調査を経て検証される段階にある
参考文献