研究

国立がん研究センターが小腸腺がん対象のADC治験を開始──エンホルツマブ ベドチンの第2相治験を整理

病気の克服を目指す研究動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 国立がん研究センター中央病院は、大阪国際がんセンター、九州大学病院と共同で、進行期小腸腺がんの患者を対象とした抗体薬物複合体(ADC)エンホルツマブ ベドチンの多施設共同第2相医師主導治験を開始したと発表した。

 小腸腺がんは一次治療後の有効な二次治療が確立されていない希少がんであり、今回の治験は、尿路上皮がんの既承認薬が標的とする腫瘍抗原が小腸腺がんでも高頻度に発現しているとする研究成果を踏まえて計画されたものである。

エンホルツマブ ベドチンを用いた小腸腺がん対象の第2相治験を開始

 国立がん研究センター中央病院は2026年3月2日、大阪国際がんセンター、九州大学病院と共同で、進行期小腸腺がんの患者を対象とした多施設共同第2相医師主導治験(ENVELOPE試験、NCCH2412試験)を開始したと発表した。対象は、プラチナ製剤を含む一次治療であるFOLFOX療法またはCapeOX療法の効果が得られなくなった、あるいは副作用により継続が困難となった、局所進行性または転移性の小腸腺がん患者である。

 試験薬には、日本において「根治切除不能な尿路上皮癌」に対して承認されている抗体薬物複合体(ADC)のエンホルツマブ ベドチンを用いる。28日を1コースとし、週1回の投与を3週間続けたのち4週目を休薬する方法で、点滴により投与される。対象人数は27人を目標としており、エンホルツマブ ベドチンの小腸腺がん患者における有効性および安全性の評価を主な目的としている。

小腸腺がんの二次治療とネクチン-4発現に関する研究の位置づけ

 小腸腺がんは、全悪性腫瘍のうち0.5%以下、全消化管悪性腫瘍のうちでも3%以下を占める希少がんであり、欧米からの報告では年間発症率が人口10万人あたり0.22~0.57人とされる。初期には自覚症状が現れにくく、通常の内視鏡検査でも観察しにくいことから、腸閉塞や腸管穿孔などの合併症をきっかけに発見されるケースも少なくなく、診断時にはすでに進行していることが多いとされる。外科的切除が困難な進行期の患者に対しては、大腸がんや胃がんでも用いられるFOLFOX療法などの化学療法が選択されてきたが、その効果が持続する期間の中央値は約6カ月にとどまり、一次治療後の二次治療は確立されていないと説明されている。

 こうした状況を踏まえ、国立がん研究センター中央病院消化管内科の研究チームは、ADCの標的となり得る腫瘍抗原の発現状況を確認するトランスレーショナルリサーチを実施した。その結果、尿路上皮がんに対する既承認のADCであるエンホルツマブ ベドチンが標的とするネクチン-4が、小腸腺がんにおいても約82%という頻度で発現していることを確認したとしている。この発現頻度は尿路上皮がんでの発現状況と同程度であり、同薬が小腸腺がんに対しても効果を示す可能性を示す結果として位置づけられている。今回の治験はこの研究成果を踏まえて計画されたものであり、発表元は、ADCを用いた小腸腺がんの治験は国内外に例がないとしている。

事実関係の整理

  • 発表元:国立がん研究センター中央病院、大阪国際がんセンター、九州大学病院
  • 試験名:ENVELOPE試験(NCCH2412試験)、jRCT番号:jRCT2031250424
  • 対象:プラチナ併用療法(FOLFOX療法またはCapeOX療法)に不応・不耐となった局所進行性または転移性の小腸腺がん患者、目標27人
  • 試験薬・投与方法:エンホルツマブ ベドチン(尿路上皮がんに承認済みの抗体薬物複合体)、28日を1コースとして週1回3週連続投与後1週休薬する点滴投与
  • 主要指標:小腸腺がん患者における有効性および安全性の評価
  • 資金・体制:AMED令和7年度革新的がん医療実用化研究事業の助成、アステラス製薬による薬剤の無償提供、調整医師代表は加藤健氏(国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科/消化管内科 科長)

参考文献


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