研究

東北大学などがルビプロストンの腎保護作用を臨床試験で確認──腸内細菌との関連を整理

病気の克服を目指す研究動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 東北大学、虎の門病院、山形大学医学部および日本医療研究開発機構(AMED)は、慢性便秘治療薬ルビプロストンが慢性腎臓病(CKD)患者の腎機能低下を抑制したとする多施設共同臨床試験の結果を公表した。

 研究グループは、患者検体を用いた網羅的解析から、ルビプロストンが腸内細菌叢を変化させ、ミトコンドリア機能に関わるスペルミジンの産生を促すことで腎臓のミトコンドリア機能を改善するという経路を報告している。

臨床試験でルビプロストンによる腎機能低下抑制を確認

 研究グループは、2016年から2019年にかけて国内9つの医療機関でCKDステージIIIb-IVの患者118例を対象とし、ルビプロストン(8μgまたは16μg/日、いずれも国内未承認用量)とプラセボを24週間投与する多施設共同臨床試験「LUBI-CKD TRIAL」を実施した。主要評価項目とした尿毒症毒素(インドキシル硫酸)の血中濃度には、投与群とプラセボ群の間で有意な差は認められなかった。一方、副次評価項目とした推算糸球体濾過量(eGFR)については、ルビプロストン16μg群でプラセボ群と比較して低下が有意に抑制されたと報告している(p=0.0457)。この傾向は、中等度の腎機能障害(eGFR 36~45 ml/min/1.73m2)を持つ患者において8μg、16μgの両群で顕著だったとしている。

 安全性については、薬剤との関連が確認されていないものを含め、報告された主な副作用は軽度から中等度の消化器症状であり、全体として忍容性は良好だったと説明している。研究グループは、患者から採取した血液・尿・便を用いた網羅的解析(マルチオミクス解析)も行い、ルビプロストン投与群では短鎖脂肪酸を産生するBlautia属やRoseburia属などの菌が増加し、これらの菌が持つポリアミン合成酵素遺伝子(aguA)量の増加とともに、血中スペルミジン濃度が上昇したことを確認した。腎不全モデルマウスへのスペルミジン経口投与では腎機能とミトコンドリアの形態・機能の改善が確認され、ヒト腎尿細管細胞を用いた実験でもスペルミジンによるATP産生能の向上が示されたとしている。

便秘と腸内細菌叢、CKD治療の位置づけ

 CKDは成人の有病率が高い一方、腎機能そのものを改善する薬剤は限られており、進行すれば透析や腎移植が必要になる。近年、CKD患者に多い便秘とそれに伴う腸内細菌叢の乱れが、尿毒症毒素の蓄積や全身の炎症を介して腎機能低下を進める要因の一つと考えられてきた。研究グループはこれまでの動物実験で、ルビプロストンやリナクロチドといった慢性便秘治療薬が尿毒症毒素を減少させ、腎機能を改善することを報告しており、今回の試験はこの知見をヒトのCKD患者で検証する位置づけとなる。資料では、ヒトを対象とした臨床試験でルビプロストンの腎保護作用を確認したのは今回が初めてだとしている。

 今回示された経路は、従来の尿毒症毒素の低減を中心に据えたCKD治療の考え方とは異なり、腸内細菌叢の変化を介してミトコンドリア機能に働きかけるという点に特徴がある。研究グループは、この知見がCKDに限らず、ミトコンドリア機能の異常が関わる疾患の治療研究にも応用され得るとしている。なお、今回投与された16μgという用量は国内で承認されている用量とは異なり、今後はより大規模な集団での検証(第3相試験)や、効果を予測するバイオマーカーの探索が課題として位置づけられている。

事実関係の整理

  • 情報の種類:多施設共同・無作為化第2相臨床試験(LUBI-CKD TRIAL)の結果および関連解析
  • 発表元:東北大学、虎の門病院、山形大学医学部、日本医療研究開発機構(AMED)
  • 対象:国内9医療機関のCKDステージIIIb-IV患者118例
  • 主要な結果:主要評価項目(尿毒症毒素)は有意差なし、副次評価項目のeGFR低下は16μg群で有意に抑制(p=0.0457)
  • 示唆された経路:腸内細菌叢の変化によるスペルミジン産生増加が腎臓のミトコンドリア機能改善に関与
  • 留意点:投与用量は国内未承認、今後は第3相試験による検証が必要とされる

参考文献

日本医療研究開発機構(AMED)「慢性便秘治療薬ルビプロストンの腎保護作用を世界で初めて臨床試験で確認―腸内細菌叢の改善でミトコンドリア機能が向上―」
https://www.amed.go.jp/news/release_20250901.html


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