藤田医科大学がアルツハイマー病とリチウムに関するメタ解析結果を発表──炭酸リチウムに効果認めず
藤田医科大学の岸太郎教授と岩田仲生教授らの研究グループは、アルツハイマー病による認知機能障害に対するリチウムの有用性を系統的レビューとメタ解析により検証した結果を発表した。
解析の結果、現在医薬品として承認されている炭酸リチウムには、認知機能障害の進行を抑制する効果が認められなかったと報告している。一方で、動物実験では未承認薬であるオロチン酸リチウムの有用性が示唆されており、今後の研究の方向性についても言及している。
炭酸リチウムに認知機能低下の抑制効果は認められず
藤田医科大学医学部精神神経科学講座の岸太郎教授と岩田仲生教授、相生山ほのぼのメモリークリニックの松永慎史医師、南勢病院の齋藤洋一医師は、アルツハイマー病の認知機能障害に対するリチウムの有用性について、既存の研究データを統合するメタ解析を実施した。その結果、日本で双極症(双極性障害)の治療薬として承認されている炭酸リチウムについては、アルツハイマー病による認知機能障害の進行を抑制する効果が確認されなかったと報告している。
研究成果は米国International Behavioral Neuroscience Societyの学術ジャーナル『Neuroscience and Biobehavioral Reviews』に掲載され、2025年11月11日にオンライン版が公開された。
動物実験の知見とヒト臨床試験の位置づけ
アルツハイマー病に対しては非薬物治療や抗認知症薬による薬物治療が行われているが、いずれも認知機能障害の進行抑制効果や周辺症状への効果の大きさは限定的とされ、新たな治療法の検討が課題とされてきた。こうした中、2025年に発表されたマウスを用いた動物実験では、体内に自然に存在する内因性リチウムの欠乏が、アミロイドβやリン酸化タウの蓄積、神経炎症、シナプス・軸索の喪失を増加させ、GSK3βの活性化を介して認知機能の低下につながることが示された。同じモデルマウスにリチウムを補給したところ、これらの病理学的変化と記憶喪失が予防されたと報告されている。
こうした動物実験の知見を踏まえ、これまでヒトを対象とした臨床試験も複数実施されてきたが、その結果は一貫していなかった。今回の研究は、こうした既存のヒト臨床試験のデータを系統的レビューとメタ解析によって統合し、リチウムの有用性を改めて検証したものと位置づけられる。解析の対象となったのは、現在医薬品として承認されている炭酸リチウムであり、動物実験で有用性が示唆されているオロチン酸リチウムは、日本及び海外のいずれにおいても医薬品として未承認である点が研究グループにより付言されている。
事実関係の整理
- 情報の種類:系統的レビューとメタ解析による研究成果
- 公表元:藤田医科大学(医学部精神神経科学講座)、相生山ほのぼのメモリークリニック、南勢病院
- 対象:アルツハイマー病による認知機能障害を対象とした既存のヒト臨床試験データ
- 主要な結果:承認薬である炭酸リチウムには認知機能障害の進行抑制効果が認められなかった
- 留意点:動物実験で有用性が示唆されているオロチン酸リチウムは、日本・海外を問わず医薬品として未承認である
- 掲載誌:『Neuroscience and Biobehavioral Reviews』(2025年11月11日オンライン版公開)
参考文献
藤田医科大学「アルツハイマー病による認知機能低下にリチウムは有効か?~既存の承認薬である炭酸リチウムには効果を認めず~」
https://www.fujita-hu.ac.jp/news/vsfo8q000000o1i3.html