藤田医科大学と徳島大学がコーヒーと腎機能の関係を発表──遺伝的多型による違いを整理
コーヒー摂取と腎機能の関連について、個人の遺伝的な体質の違いが影響する可能性を示す研究成果が公表された。
徳島大学大学院医歯薬学研究部の渡邊毅助教と藤田医科大学医療科学部の藤井亮輔講師らの研究グループは、大規模コホートデータを用いた解析により、コーヒー摂取行動やカフェイン代謝に関わる遺伝的多型が、コーヒーと腎機能の関係に影響することを示唆したと発表した。この成果は国際学術誌『European Journal of Nutrition』に令和7年10月15日付で掲載された。
遺伝的多型ごとに異なるコーヒーと腎機能の関連
研究グループは、日本多施設共同コーホート(J-MICC)研究のデータを用い、35~69歳の日本人7468人(男性3515人、女性3953人)を対象に解析を行った。対象者は、コーヒー摂取行動に関連する遺伝的多型であるrs2074356(HECTD4)、rs762551(CYP1A2)、rs4410790(AHR)の型に応じて、コーヒー摂取量が多くなりやすい集団、中程度になる集団、少なくなる集団に分けられ、それぞれの集団内で年齢や性別などの交絡因子を調整した多変量ロジスティック回帰分析により、慢性腎不全(CKD)との関連が検討された。
解析の結果、rs2074356(HECTD4)でコーヒー摂取が多くなりやすいAA型を持つ人では、コーヒー摂取量が多いほどCKDの有病率が低いという関連が示された。また、rs762551(CYP1A2)とrs4410790(AHR)については、カフェイン代謝速度が中程度となるヘテロ型の人において、コーヒー摂取とCKDの有病率との間に負の関連がみられたと報告されている。
一貫しなかった従来の研究と遺伝的背景
コーヒーは世界的に広く飲まれている飲料であり、これまでにも心血管疾患やがん、2型糖尿病などのリスクとの関連が報告されてきた。腎機能は高血圧や高血糖といった心血管代謝系のリスク因子と密接に関連することから、コーヒーが腎機能に対しても保護的に働く可能性が指摘されてきたが、従来の研究では結果が一貫していなかったという背景がある。
研究グループは、この不一致の要因の一つとして、カフェイン代謝に関わる遺伝的多型による個人差が影響している可能性を挙げている。遺伝的多型とは、DNAの塩基配列における個人差を指し、体質の違いや薬剤・成分の代謝しやすさに関わるとされる。今回の解析で用いられたrs2074356(HECTD4)は習慣的なコーヒー摂取量との関連が報告されている多型であり、rs762551(CYP1A2)はカフェイン代謝に関わる酵素の多型、rs4410790(AHR)はCYP1A2の制御に関わる多型として位置づけられている。
事実関係の整理
- 情報の種類:疫学研究(横断解析、コホート研究データを使用)
- 発表元:徳島大学大学院医歯薬学研究部、藤田医科大学医療科学部
- 対象:日本多施設共同コーホート(J-MICC)研究に参加した35~69歳の日本人7468人
- 主要指標:遺伝的多型(rs2074356[HECTD4]、rs762551[CYP1A2]、rs4410790[AHR])と慢性腎不全(CKD)の有病率
- 留意点:横断研究であり、カフェイン以外のコーヒー成分や他の遺伝的多型については検討されていない
参考文献
藤田医科大学「コーヒーの健康効果は遺伝子で決まる? ~遺伝的多型を考慮したコーヒーと腎機能の関係~」
https://www.fujita-hu.ac.jp/news/vsfo8q000000pxck.html