研究

京都大学が大腸がん幹細胞の包括的解析から予後予測シグネチュアを同定──5サブタイプの遺伝子発現を整理

病気の克服を目指す研究動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 京都大学の研究グループは、患者由来の大腸がん幹細胞を用いた網羅的な遺伝子発現解析から、患者の予後と関連する5つのサブタイプを特定し、これらを統合した予後指標「大腸がん総合シグネチュア(GCS)」を同定したと発表した。

 57株の大腸がん幹細胞について正常大腸上皮幹細胞との比較を行い、各サブタイプに特徴的な遺伝子群の発現量が患者の転帰と関連することを示した内容である。研究成果は2025年10月31日に国際学術誌『Cancer Science』へオンライン掲載された。

5つの遺伝子発現サブタイプと統合予後指標の内容

 武藤誠 京都大学大学院医学研究科教授(田附興風会医学研究所北野病院所長を兼任)、柿崎文彦 同特定助教らの研究グループは、患者由来大腸がん幹細胞(CRC-SC)57株のmRNA発現プロファイルを正常大腸上皮幹細胞(NCE-SC)と比較し、5つのCRCサブタイプを特定したと発表した。1つ目のサブタイプでは、MUC12、PIGR、PLA2G2A、SLC4A4、ZG16の発現が増加していたと報告している。残る4つのサブタイプでは、正常大腸上皮幹細胞と比較してDEFA6、BST2、MAGEA6、IGF2の発現が著しく増加していたとしている。

 研究グループは、これらの遺伝子の発現がそれぞれ患者の転帰に影響を与えていたことを確認したうえで、5つのサブタイプ特異的シグネチュアを統合することで、大腸がん総合シグネチュア(GCS)と呼ばれる指標を構築したと説明している。GCSにより、各患者に個別化された予後予測シグネチュアが提供可能になったとしている。

約10年にわたる幹細胞株の蓄積と解析の経緯

 本プロジェクトは、武藤が教授職を定年退職後、国際高等教育院の特定教授として再雇用された時期に、医学部附属病院外科学教室(当時の坂井義治教授、その後の小濵和貴教授)と協力し、同病院で手術摘出された大腸がん組織から幹細胞を培養して開始したと説明されている。この間、外科大学院生の学位論文研究として複数のテーマで研究がまとめられ、国際誌への論文発表が重ねられたとしている。

 実臨床に即した全体像を把握するため、200症例以上の患者組織から幹細胞株が確立・蓄積され、発現遺伝子と予後との関係を示すサブタイプの検索が進められた。この過程には約10年の歳月を要したと研究グループは述べている。得られたGCSは、既存の方法とは異なるアプローチにより統計的な関連性を示すものであり、欧米の企業が臨床サービスとして商用化している既存の予後予測手法との比較についても言及されている。

事実関係の整理

  • 情報の種類:大学発の基礎研究成果
  • 公表元:京都大学大学院医学研究科
  • 対象:患者由来大腸がん幹細胞(CRC-SC)57株、正常大腸上皮幹細胞(NCE-SC)
  • 主要指標:5つのCRCサブタイプ、大腸がん総合シグネチュア(GCS)
  • 掲載誌:『Cancer Science』(2025年10月31日オンライン掲載、117巻1号130-144頁)
  • 留意点:本成果は基礎研究段階の報告であり、臨床応用に向けた検証段階は本発表からは確認できない

参考文献


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