研究

国立がん研究センターが若年発症がんの国際動向を発表──大腸がん・子宮体がんの罹患と死亡増加を整理

グローバル医療と社会の関係をテーマに、タブレット端末を操作する医療従事者のイメージ

 国立がん研究センターを中心とした国際共同研究チームは、世界44の国と地域で2000年から2017年までに診断された若年(20歳以上50歳未満)発症がんの罹患率・死亡率の動向を分析した結果を発表した。

 女性の大腸がんや子宮体がんなど複数のがん種で、若年層の罹患率が高齢発症がんと比べて顕著に増加しており、日本を含む一部の国では罹患率だけでなく死亡率も上昇していることが示された。研究チームは、若年者の肥満率が高い国・地域では若年発症がんの罹患率も上昇する傾向があることも確認したとしている。

若年層の大腸がん・子宮体がんで罹患と死亡がともに増加

 国立がん研究センター研究所統合がん研究分野の鵜飼知嵩分野長らの研究チームは、国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer;IARC)が公開する「Cancer Incidence in Five Continents」のデータベースと、世界保健機関(WHO)の死亡統計データベースを用い、日本を含む世界44の国と地域における若年発症がんの動向を分析した。その結果、女性では甲状腺がん、乳がん、悪性黒色腫、子宮体がん、大腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、膵臓がん、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、男性では甲状腺がん、腎臓がん、精巣がん、前立腺がん、大腸がん、悪性黒色腫、白血病などの年齢調整罹患率が多くの国・地域で増加していることが確認されたと発表している。

 若年発症がんと高齢発症がんの罹患率を比較したところ、女性の大腸がんは6カ国、子宮頸がんは6カ国、膵臓がんは5カ国、多発性骨髄腫は5カ国で、男性の前立腺がんは12カ国、大腸がんは8カ国、腎臓がんは6カ国で、若年発症の罹患率が高齢発症より顕著に増加していたと報告している。日本では、若年発症の子宮体がんの罹患率が高齢発症がんと比べて顕著に増加していたという。さらに世界36カ国を対象に罹患率と死亡率を比較した結果、子宮体がんは日本、韓国、エクアドル、米国、イギリスで、大腸がんはカナダ、米国、イギリスなどで、いずれも罹患率と死亡率がともに上昇していたと説明している。

 研究チームは、がんのリスク要因とされる肥満との関連についても分析し、若年者の肥満率が増加している米国、カナダ、イギリス、オーストラリアなどを中心に、多くの国・地域で若年発症がんの罹患率も上昇していたと報告している。日本でも若年者の肥満率は増加傾向にあるものの、諸外国と比べて緩やかであったとしている。

若年発症がんの増加をめぐる背景

 若年発症がんの罹患率が世界各地で増加していることは、これまでも鵜飼分野長らのグループを含む複数の研究チームから報告されてきた。ただし、がんの罹患率はがん登録の精度向上やスクリーニング技術の進歩によっても増加し得るため、その動向を評価するには、高齢発症がんとの比較や死亡率の推移を合わせて検討する必要があったと研究チームは説明している。今回の研究は、こうした課題を踏まえ、罹患率の推移に加えて高齢発症がんとの比較、罹患率と死亡率の比較、肥満率との関連という複数の観点から分析を行ったものである。

 本研究は、国立がん研究センター研究所統合がん研究分野とがん対策研究所予防研究部を中心に、ハーバード公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)のEdward L Giovannucci教授、イチロー・カワチ教授らとの国際共同研究として行われた。研究成果は科学雑誌『Military Medical Research』に2025年11月14日付で掲載されている。国立がん研究センターは、若年発症がんの病態解明に向けて、大規模コホート研究とオミックス解析を組み合わせた研究を進めており、今後も海外研究機関との連携を継続する方針を示している。

事実関係の整理

  • 情報の種類:国際共同研究による疫学分析(論文発表)
  • 公表元:国立研究開発法人国立がん研究センター
  • 対象:世界44の国と地域、2000年〜2017年診断の若年(20歳以上50歳未満)発症がん
  • 主要指標:年齢調整罹患率、年齢調整死亡率、若年者の肥満率
  • 掲載誌:『Military Medical Research』(2025年11月14日掲載)
  • 留意点:罹患率の変化にはがん登録精度やスクリーニング技術の向上など複数の要因が影響し得る

参考文献

国立研究開発法人国立がん研究センター
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2025/1225/index.html


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