大阪公立大学が総労働時間と健康リスクの関連を発表──非回復性睡眠とメンタルヘルスの男女差を整理
大阪公立大学は、有償労働に加えて家事・育児・介護などの無償労働を合わせた「総労働時間」が、睡眠の質やメンタルヘルスに及ぼす影響を検証した研究成果を発表した。
40~64歳の就労者3959人を対象とした調査分析から、総労働時間の長さが男女ともに非回復性睡眠のリスクと関連し、女性ではメンタルヘルス不良のリスクとも関連することが示された。
総労働時間の長さと非回復性睡眠・メンタルヘルスとの関連
大阪公立大学大学院看護学研究科の森本明子教授と、同大学院経済学研究科の杉田菜穂教授らの研究グループは、40~64歳の就労者3959人を対象としたアンケート調査の結果を分析し、有償労働時間と無償労働時間を合算した総労働時間が、非回復性睡眠およびメンタルヘルスに及ぼす影響を検証した。
分析の結果、女性は有償労働時間が男性より短いにもかかわらず、家事・育児・介護などの無償労働時間を含めた総労働時間は男性より長いことが確認された。また男女ともに、総労働時間が長い群では非回復性睡眠のリスクが高いことが示された。一方、メンタルヘルス不良のリスクについては、女性では総労働時間の長さとの関連が認められたが、男性では明確な関連は確認されなかった。
研究成果は2026年1月8日、社会科学と健康科学の学際領域を扱う学術誌『Social Science & Medicine』にオンライン掲載された。
「時間貧困」とジェンダー不均衡という視点
日本を含む先進国では共働き世帯の増加に伴い、多くの中年層が有償の就労に加えて家事などの無償のケア労働を担う状況が広がっている。有償労働と無償労働の両方に追われ、生活に必要な時間を十分に確保できない状態は「時間貧困」と呼ばれ、慢性化すると心理的ストレスにつながる可能性が指摘されてきた。
従来の研究の多くは有償労働時間のみに着目しており、無償労働時間を合算した総労働時間が健康に及ぼす影響については十分に検討されてこなかったとされる。研究グループは、この点を踏まえ、総労働時間という枠組みで睡眠やメンタルヘルスとの関連を包括的に検証した。
研究グループは、健康政策や働き方改革の検討において、無償労働を含めた総労働時間を考慮する必要性を示す結果であるとしている。また、政策の立案から決定、実施の各段階に男女が平等に関わる「ジェンダー主流化」という観点との関連についても言及している。
事実関係の整理
- 情報の種類:学術研究(横断研究)
- 公表元:大阪公立大学大学院看護学研究科・経済学研究科
- 対象:40~64歳の就労者3959人(アンケート調査)
- 主要指標:総労働時間(有償労働時間+無償労働時間)、非回復性睡眠のリスク、メンタルヘルス不良のリスク
- 掲載誌:『Social Science & Medicine』(2026年1月8日オンライン掲載)
- 留意点:横断研究であり、総労働時間と健康指標との関連が示されているが、因果関係を示すものではない
参考文献