研究

大阪大学、漢方薬「防風通聖散」が加齢肥満マウスの脂肪組織線維化を抑制と発表

病気の克服を目指す研究動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 大阪大学大学院医学系研究科の研究グループは、日本で肥満症などに広く用いられている漢方薬「防風通聖散」に、加齢に伴う肥満によって生じる脂肪組織の「線維化」を抑制する効果があることを明らかにしたと発表した。

 高齢マウスを用いた動物実験と培養細胞を用いた実験の両方から、防風通聖散が体重減少に伴う間接的な効果だけでなく、直接的な抗線維化作用を持つことが示唆された。研究グループはさらに、18種類の構成生薬を個別に分析し、抗線維化作用を持つ成分と線維化を促進する性質を持つ成分をそれぞれ同定した。

防風通聖散が加齢肥満マウスの脂肪組織・肝臓の線維化を抑制

 大阪大学大学院医学系研究科の大西彩乃氏(博士後期課程)、小野寺俊晴助教、下村伊一郎教授らの研究グループは、漢方薬「防風通聖散」が、加齢に伴う肥満によって生じる脂肪組織の線維化を抑制する効果を持つことを明らかにしたと発表した。脂質を多く含むエサによって肥満を誘発した高齢マウスに防風通聖散を投与したところ、体重や皮下脂肪・内臓脂肪・肝臓の重量が減少するとともに、脂肪組織や肝臓における線維化が抑制されることが確認されたという。

 培養細胞を用いた実験では、防風通聖散が体重減少に伴う間接的な効果だけでなく、直接的な抗線維化作用を持つことも示唆された。具体的なメカニズムとして、線維化の制御に関わる「TGF-β/Smadシグナル伝達経路」の一部であるSmad2/3のリン酸化を防風通聖散がブロックすることが確認された。さらに研究グループは、防風通聖散を構成する18種類の生薬を個別に分析し、連翹(レンギョウ)、生姜(ショウキョウ)、大黄(ダイオウ)、黄芩(オウゴン)に強力な抗線維化作用があることを同定した一方、芒硝(ボウショウ)などの鉱物由来成分は培養条件下で線維化を促進する性質を持つことも分かったとしている。これらの結果を踏まえ、芒硝など線維化促進成分を除去し連翹など抑制成分を増量するよう配合を調整したところ、従来の処方よりも強力に線維化を抑える効果が確認されたという。

肥満・加齢と組織の線維化をめぐる背景

 肥満人口の増加による健康への影響は世界的な課題となっている。肥満は体重増加にとどまらず、体内で慢性的な炎症を引き起こし、組織にコラーゲンなどの物質が過剰に蓄積する「線維化」をもたらすことが知られている。近年、肥満に対するいくつかの治療薬が登場しているが、使用にあたってはBMI(Body Mass Index)などによる適応の制限がある。加齢もまた、組織の線維化を進行させる要因の一つとされ、肥満と加齢による線維化の進行は、心臓・肝臓・腎臓など全身の臓器における病気につながるとされている。

 脂肪組織で線維化が生じると、脂肪組織自体の機能不全が起こり、糖尿病や脂質異常症といった全身の代謝異常、あるいは脂肪性肝疾患を含む異所性脂肪蓄積の原因となることが知られている。しかし、線維化を直接的に抑える治療法は現時点で確立されていない。防風通聖散は、日本で肥満症などに広く用いられてきた漢方薬であり、脂質の排泄や代謝の促進といった機序で肥満を抑制する作用が近年明らかになってきていた。防風通聖散や構成生薬に抗線維化作用があるとする報告も存在したが、「加齢」という条件下で脂肪組織の線維化に対してどのような直接的効果を発揮するかは、これまで解明されていなかったという。

事実関係の整理

  • 発表主体:大阪大学大学院医学系研究科(大西彩乃氏、小野寺俊晴助教、下村伊一郎教授ら)
  • 共同研究先:小林製薬株式会社
  • 対象:脂質を多く含むエサで肥満を誘発した高齢マウス、培養細胞
  • 主要結果:脂肪組織・肝臓の線維化抑制、Smad2/3リン酸化のブロック、18種構成生薬の個別作用の同定、配合調整による抗線維化作用の強化
  • 掲載誌:『Phytomedicine』(2026年6月29日オンライン公開)
  • 留意点:動物・細胞実験の結果であり、ヒトでの臨床的効果を直接示すものではない

参考文献


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