東北大学、日本人6万9千人のゲノムを解析しファブリー病関連バリアントの保有頻度を調査、女性の遅発型で診断見逃しの可能性を報告
東北大学東北メディカル・メガバンク機構の研究グループが、日本人6万8615人のゲノムシークエンスデータを解析し、指定難病の一つであるファブリー病の原因となるGLA遺伝子の病的・病的可能性バリアントの保有頻度を調べた結果を発表した。
該当するバリアントを保有していたのは5人で、全員が女性だった。女性は男性に比べて遅発性の症状を示すことがあり、通常の診療で診断が見逃されている可能性があるとしている。
6万8615人のゲノム解析でGLA遺伝子バリアントを確認
東北大学東北メディカル・メガバンク機構の寶澤篤教授、東北大学病院循環器内科の野出楠平特任助教(研究責任者)、東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の下沢達雄教授、飯田海医師らの研究グループは、「東北メディカル・メガバンク計画」のコホート調査に参加した日本人6万8615人のゲノムシークエンスデータを解析した。
その結果、ファブリー病の原因となるGLA遺伝子の病的または病的可能性の高いバリアントを5人に確認し、保有頻度は1万3723人に1人だった。該当者は全員女性で、病的バリアントを持つ4人ではファブリー病関連物質であるlyso-Gb3が基準値を上回っていた。研究グループは、女性の遅発型ファブリー病が十分に診断されていない可能性を示す結果としている。
さらに、現時点では疾患との関連が明確でない、臨床的意義不明のバリアントは17人に確認され、保有頻度は約4036人に1人だった。
研究成果は2026年8月7日付で学術誌『Genetics in Medicine Open』に掲載された。
ファブリー病と女性の診断上の課題
ファブリー病は、α-ガラクトシダーゼA(GLA)の働きが低下し、糖脂質が全身に蓄積することで、心臓、腎臓、神経などに障害を及ぼす遺伝性疾患であり、指定難病の一つとされる。X連鎖性の遺伝形式をとるため、男性では症状が明確に現れやすい一方、女性では発症の時期や程度に幅があり、診断が難しいとされてきた。治療法があるため、早期診断が重要とされている。
今回の研究は、「東北メディカル・メガバンク計画」で構築された大規模な日本人ゲノムデータを用いたものである。この計画は、東北大学と岩手医科大学が連携し、東日本大震災の被災地域を主な対象として、一般住民約15万人を対象とする健康調査(コホート調査)を実施し、提供された生体試料と健康調査情報、およびゲノム・オミックス解析結果などを蓄積したバイオバンクを構築することで、次世代医療の実現を目指す取り組みである。
研究グループは、こうした大規模ゲノムデータを用いることで、まれな遺伝性疾患の原因となるバリアントの保有頻度を、これまでの臨床統計よりも高い精度で把握できるとしている。
事実関係の整理
- 情報の種類:ゲノム解析研究(学術論文)
- 発表元:東北大学東北メディカル・メガバンク機構
- 対象:東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査参加者6万8615人
- 主要指標:GLA遺伝子の病的・病的可能性バリアント保有頻度(1万3723人に1人)、臨床的意義不明バリアント保有頻度(4036人に1人)、lyso-Gb3値
- 留意点:病的可能性の高いバリアントを保有していても、必ずしも発症するとは限らず、臨床的意義不明のバリアントのみでは診断には至らない
参考文献
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https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2026/08/press20260818-06-gla.html