JAISTが発達性相貌失認の質問紙「PI20」を項目反応理論で検証、20項目のうち一部で識別力の低さを確認
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)人間社会研究領域の森田玲奈助教は、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の学生と共同で、発達性相貌失認の傾向を自己評価で簡便に把握する「20項目式相貌失認指標(PI20)」を一般成人599人のデータに基づいて検証した。
古典的テスト理論と項目反応理論を用いた分析の結果、PI20全体は良好な信頼性と妥当性を示す一方、質問項目ごとに測定性能が異なることが分かり、特定の2項目で改善の余地があることが示された。
質問紙PI20の全体的な妥当性と項目ごとの精度差を確認
JAISTと慶應義塾大学の研究グループは、日本語版PI20に回答した一般成人603人のうち、回答の有効性を確認した599人分のデータを分析した。古典的テスト理論により、尺度全体の信頼性と単一因子構造の妥当性、各項目と合計得点との関係を検証した。続いて項目反応理論を用いて、各項目が回答者の発達性相貌失認の傾向をどの程度識別できるか、またどの程度の傾向を持つ人に対して測定力を発揮するかを評価した。
分析の結果、PI20全体は高い内的一貫性を示し、単一因子構造にも良好な適合性が確認された。多くの項目は十分な識別力と測定情報量を持っていたが、項目3と項目13は他の項目に比べて識別力が低く、発達性相貌失認の傾向を測る項目として改善の余地があることが分かった。項目3は「特徴的な顔は認識しやすい」という一般の人にも当てはまりやすい内容、項目13は自分の顔の認識に関する内容であり、発達性相貌失認に固有の困難さを十分に反映できていない可能性があるとされた。回答データセットと分析コードはOpen Science Frameworkで公開されている。
診断基準が未確立な発達性相貌失認とPI20の位置づけ
発達性相貌失認は、明らかな脳損傷がないにもかかわらず生涯にわたって顔の認識に困難を抱える神経発達的な特性とされる。調査方法によって推定値には幅があり、人口の約2~3%にみられるとの報告もあるが、有病率は確定していない。主要な診断分類では独立した診断名として扱われておらず、評価基準も十分に確立されていない状況にある。
こうした中、PI20は自己評価形式のスクリーニングツールとして国際的に広く利用されてきた。回答者は20の質問に対して5段階(1:全く当てはまらない~5:全く当てはまる)で回答し、顔認識の困難さを簡便に評価する仕組みとなっている。PI20は日本語を含む複数の言語に翻訳され、世界各国の研究で用いられているが、専門家の知見をもとに作成された質問紙であるため、項目ごとの測定性能にばらつきがある可能性が指摘されていた。どの項目が発達性相貌失認の傾向を強く捉え、どの項目に見直しが必要かを実証的に示すデータはこれまで十分ではなかった。
事実関係の整理
- 情報の種類:学術研究(項目分析)
- 発表主体:JAIST(北陸先端科学技術大学院大学)人間社会研究領域、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科
- 対象:日本語版PI20に回答した一般成人599人
- 使用手法:古典的テスト理論、項目反応理論
- 主な結果:尺度全体は良好な信頼性・妥当性を示す一方、項目3・項目13は識別力が低い
- 掲載誌・掲載日:Behavior Research Methods、2026年8月12日
- 研究費:早稲田大学特定課題研究助成費(2025年度)
- 留意点:本研究はPI20を診断にそのまま用いることを示すものではなく、質問項目の見直しや今後の短縮版開発に向けた基礎的知見と位置づけられる
参考文献
JAIST åé¸å 端ç§å¦æè¡å¤§å¦é¢å¤§å¦
https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2026/08/19-1.html