藤田医科大学、第2世代抗精神病薬の低ナトリウム血症リスクを比較、アリピプラゾールはオランザピンより低リスクと報告
藤田医科大学の研究チームが、第2世代抗精神病薬ごとに低ナトリウム血症のリスクが異なる可能性を示す研究結果を報告した。米国食品医薬品局(FDA)の副作用報告システムと、日本の病院診療データベースの2種類のデータを組み合わせて解析している。
5万5394人分の国内診療データを用いた解析では、アリピプラゾールがオランザピンと比べて有意に低ナトリウム血症のリスクが低く、調整ハザード比は0.52だった。一方、他の抗精神病薬では、調整後に有意な差は確認されなかったという。
薬剤間で低ナトリウム血症リスクに差
藤田医科大学医学部薬物療法学・情報科学講座の羽多野将一准教授らの研究チームは、小関丈直医師、齋藤剛雄医師、山田茂樹医師とともに、個々の第2世代抗精神病薬に関連する低ナトリウム血症のリスクを比較した。研究成果は2026年8月13日、『JAMA Network Open』誌オンライン版(第9巻8号)に掲載された。
研究チームはまず、1997年第4四半期から2023年第3四半期までの米FDA有害事象報告システムのデータを調べた。対象は1780万5418件の報告のうち、第2世代抗精神病薬の単剤治療に関わる45万8745件で、オランザピンを基準として他の薬剤の低ナトリウム血症に関する報告オッズを比較した。その結果、複数の薬剤でオランザピンより低い報告オッズが示され、ブレクスピプラゾールとルラシドンで最も低い値が得られた。ただし、自発報告データには分母情報がなく、実際の発生率や絶対リスクを測定できないため、この段階の結果は仮説生成にとどまるとされた。
続いて研究チームは、2008年4月から2024年4月までの日本の病院診療データベースを用い、この仮説を検証した。抗精神病薬を処方され、直近の抗精神病薬使用歴や低ナトリウム血症がなかった5万5394人を対象に、治療開始後最長180日間を追跡した。追跡期間中に低ナトリウム血症を発症したのは366人(0.7%)だった。患者背景やリスクに影響する他の要因の違いを調整した結果、アリピプラゾールはオランザピンと比べて有意に低ナトリウム血症のリスクが低く、調整ハザード比は0.52だった。アリピプラゾール以外の薬剤では、調整後にオランザピンとの有意な差は確認されなかった。
抗精神病薬と低ナトリウム血症の位置づけ
抗精神病薬は、統合失調症のほか、双極性障害やうつ病の治療にも用いられる。これらの薬剤は低ナトリウム血症と関連することが知られており、血液中のナトリウム濃度が大きく低下する状態を指す。第2世代抗精神病薬は第1世代抗精神病薬と比べて低ナトリウム血症のリスクが低い可能性が指摘されてきたが、第2世代抗精神病薬の個々の薬剤間でこのリスクに差があるかどうかは明らかになっていなかった。
羽多野准教授は、「低ナトリウム血症は抗精神病薬の使用に伴う安全性上の懸念の1つだが、第2世代抗精神病薬の個々の薬剤間を比較した知見は限られている」と説明している。そのため研究チームは、自発報告システムを用いて個々の薬剤間の低ナトリウム血症リスクに関する仮説を立て、その上で診療データベースを用いてその関連を評価するという、2段階の手法を採用したという。
研究チームは、今回の研究が観察研究であるため、交絡因子の残存や、低ナトリウム血症の検出方法の違いが結果に影響した可能性があるとしている。また、薬剤安全性監視データベースと診療データベースの知見を組み合わせることで、重要な限界を踏まえつつ、薬剤の安全性を比較するための補完的な根拠を提供するものだとしている。
事実関係の整理
- 情報の種類:学術研究(薬剤疫学・薬剤安全性監視)
- 発表主体:藤田医科大学医学部薬物療法学・情報科学講座(羽多野将一准教授ら)
- 掲載誌:『JAMA Network Open』(2026年8月13日オンライン掲載、第9巻8号)
- データ:米FDA有害事象報告システム(1997年第4四半期~2023年第3四半期、1780万5418件)、日本の病院診療データベース(2008年4月~2024年4月、5万5394人)
- 主要結果:アリピプラゾールはオランザピンと比べ低ナトリウム血症リスクが有意に低く、調整ハザード比0.52。他剤では有意差なし。診療データベースの追跡180日間で低ナトリウム血症は366人(0.7%)に発症
- 留意点:観察研究であり、交絡因子の残存や検出方法の違いが結果に影響した可能性がある
参考文献