研究

日本感染症学会が麻しん増加への注意喚起を発表──感染力・合併症・予防接種の考え方を整理

グローバル医療と社会の関係をテーマに、タブレット端末を操作する医療従事者のイメージ

 日本感染症学会は、麻しん(はしか)の患者数が世界的にも国内でも増加傾向にあるとして、感染力や症状の経過、重篤な合併症、ワクチンによる予防に関する情報を公表した。

 麻しんは基本再生産数が12〜18とされる感染力の強いウイルス感染症であり、肺炎や脳炎などの合併症を伴う場合があることから、同学会はワクチン接種歴の確認を呼びかけている。

感染力の強さと重篤化リスクを整理

 日本感染症学会の公表内容によると、麻しんウイルス(Measles virus)による感染症は、免疫を持たない人が感染者と密接に接触した場合、家庭内などの環境で約90%が感染すると米国疾病予防管理センター(CDC)の資料に基づいて説明されている。感染経路は飛沫感染・接触感染に加え、空気感染(飛沫核感染)も生じるとされ、換気の悪い室内では感染者が退出した後もウイルスが漂う可能性があるとしている。

 症状の経過については、発熱や咳、結膜炎から始まり、その後に高熱と発疹の拡大が生じ、回復期を経て解熱に至る一連の流れが示されている。感染後は既存の免疫記憶細胞が一時的に損なわれる「免疫健忘」と呼ばれる現象が生じ、回復後も数週間から数カ月にわたって他の感染症にかかりやすい状態が続くことがあるとされる。また、過去にワクチン接種歴がある場合などに典型的でない経過をたどる「修飾麻疹」の報告が増加している点にも言及されている。

 合併症としては、肺炎、約1000人に1人の割合で発症するとされる脳炎、後年に発症し得るSSPE、中耳炎、角膜炎などが挙げられており、先進国においても1000〜2000人に1人程度の割合で死亡例が報告されているとしている。診断にはPCR検査やIgM抗体検査、ペア血清によるIgG抗体価の測定が用いられ、麻しんは感染症法上の五類感染症(全数把握対象)に位置づけられているため、診断した医師には保健所への届出義務があるとされる。治療は対症療法が中心であり、特効となる抗ウイルス薬は存在しないと説明されている。

ワクチン接種率と世代差という位置づけ

 日本ではMRワクチン(麻しん・風しん混合ワクチン)の定期接種が2回制度として運用されており、1歳になった時点での1回目接種と、就学前1年間における2回目接種が案内されている。学会の資料では、集団としての流行を防ぐには接種率を95%以上に維持することが必要とされ、国立健康危機管理研究機構(JIHS)が公表する定期接種第1期の接種率推移を踏まえて、地域によって接種率に差がある点が示されている。

 また、日本国内では定期接種制度が過去に複数回見直されてきた経緯があり、生まれた年代によって接種機会や接種回数が異なることが、世代ごとの感染リスクの違いにつながっているとされる。接種歴が不明な成人については、抗体検査による免疫確認や、必要に応じた追加接種が選択肢として挙げられている。妊娠を予定している場合は妊娠前の2回接種完了、海外渡航を予定している場合は渡航前の接種歴確認が推奨されるなど、対象者の状況に応じた対応が示されている。

事実関係の整理

  • 情報の種類:学会による公衆衛生上の注意喚起
  • 公表元:日本感染症学会
  • 対象:一般市民および医療機関受診者
  • 主要指標:基本再生産数12〜18、家庭内二次発症率約90%(CDC資料に基づく)、MRワクチンの予防効果1回接種約93〜95%・2回接種97〜99%
  • 留意点:接種歴・感染歴の確認や検査結果の解釈については、個別の状況に応じてかかりつけ医への相談が推奨されている

参考文献

日本感染症学会「麻しん(はしか)が世界・国内で増加しています」
https://www.kansensho.or.jp/jaid_measles_warning/jaid_measles_warning-2.html


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