藤田医科大学ら、色素調節遺伝子MC1Rの変異がパーキンソン病の運動症状進行に関連と報告
藤田医科大学とハーバード大学(Harvard University)の研究グループは、皮膚や毛髪の色素形成を調節する遺伝子MC1Rの機能低下型変異を持つパーキンソン病患者において、運動症状の悪化速度が変異を持たない患者より速いことを報告した。
解析の結果、運動症状の悪化は変異保有者で約30%速く進行していることが示され、別の患者集団でも同様の傾向が確認された。発症前段階にある人を対象とした解析では、変異保有者でパーキンソン病への移行リスクが高いことも示された。
MC1R変異と運動症状進行の関連
藤田医科大学(愛知県豊明市、学長:岩田仲生)医学部脳神経内科学と、ハーバード大学マサチューセッツ総合病院のXiqun Chen博士らが主導した共同研究グループは、既知の主要なパーキンソン病関連遺伝子変異を持たない患者383例を対象に、最大12年間の追跡データを解析した。国際運動障害学会が作成した評価尺度であるMDS-UPDRS Part IIIで測定した運動症状スコアの悪化は、MC1R変異保有者で年2.51点、非保有者で年1.94点となり、保有者で約30%速く進行していた。悪化は主に動作緩慢に見られたとしている。この関連は、別の臨床試験の患者集団(587例)を用いた解析でも確認され、こちらでは変異保有者の悪化が約50%速いという結果だった。変異を2つ持つ患者では約63%進行が速く、変異の数が多いほど進行が速いという量的な関係も見られたとしている。
パーキンソン病の進行差とMC1Rの位置づけ
パーキンソン病は進行の速さに個人差が大きいことが知られているが、LRRK2やGBAなど既知の原因遺伝子で説明できるのは患者の一部にとどまる。MC1Rは皮膚や毛髪の色素を決める遺伝子であり、酸化ストレスや炎症の制御にも関わるとされる。欧州系の人では60~70%がMC1Rの機能低下型変異を少なくとも1つ持っているとされるが、こうした変異が発症後の病気の進行に影響するかどうかはこれまで明確ではなかった。
研究グループは、世界的なパーキンソン病のレジストリシステムである「パーキンソン病進行マーカー・イニシアチブ」(PPMI)に参加し、既知の原因遺伝子変異を持たない患者のデータを用いて解析した。また発症前段階にある53例を解析したところ、MC1R変異保有者でパーキンソン病への移行リスクが高いことが示された一方、認知機能や非運動症状、ドパミントランスポーター画像の変化には明確な差は見られなかったとしている。
事実関係の整理
- 情報の種類:学術研究(観察研究・コホート解析)
- 発表元:藤田医科大学、ハーバード大学マサチューセッツ総合病院
- 対象:既知の原因遺伝子変異を持たないパーキンソン病患者383例、別コホート587例、発症前段階の53例
- 主要指標:MDS-UPDRS Part IIIによる運動症状スコアの年間変化量、パーキンソン病への移行ハザード比(約4.8倍)
- 留意点:対象は主に欧州系の患者であり、日本人を含む他の集団での検証は今後の課題とされている
参考文献