研究

京都大学が肺がん免疫療法の効果予測につながる血中がん反応性T細胞マーカーを発見──研究内容を整理

病気の克服を目指す研究動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 京都大学の研究グループが、血液中にごくわずかしか存在しない、がんを攻撃する能力を持つT細胞(がん反応性T細胞)を見分けるマーカーを発見したと発表した。

 このマーカーを持つ血中のT細胞は、免疫チェックポイント阻害剤による肺がん治療の効果と関連する可能性が示されたとして、研究成果を国際学術誌『Nature Communications』に発表した内容を整理する。

血中のがん反応性T細胞を見分けるマーカーを発見

 谷口智憲・京都大学大学院医学研究科特定准教授、茶本健司・同教授、伊藤克弘・同博士課程学生(現:イェール大学(Yale University)ポスドク研究員)らと、猪爪隆史・千葉大学教授らによる共同研究グループは、血液中にわずかに存在するがん反応性T細胞を、血中で識別できるマーカーを発見したと発表した。

 このマーカーを持つT細胞は、がん組織の内部で働くT細胞のもとになる細胞である可能性が示されたという。さらに、免疫チェックポイント阻害剤によるがん免疫療法で治療効果が確認された非小細胞肺がん(NSCLC)患者においては、この血中のがん反応性T細胞の性質が、治療の経過とともに変化することが分かったとしている。

 研究グループは、血液検査によって免疫療法の効果を予測できる可能性があるとし、患者ごとの治療選択に役立つ可能性があるとしている。また、血液中からがん反応性T細胞を取り出して利用する手法につながる可能性にも言及している。

がん免疫療法における血中T細胞研究の位置づけ

 がんを攻撃できるT細胞は、免疫チェックポイント阻害剤をはじめとするがん免疫療法の効果を左右する重要な細胞とされてきた。ただし、こうしたT細胞は主にがん組織内での研究が中心であり、血液中にごくわずかしか存在しないことから、血中での性質はこれまで十分に明らかにされていなかった。

 今回の研究は、がん組織内で働くT細胞が血液中のどのような細胞に由来するのかという疑問に対し、血中のマーカーという切り口から知見を加えたものと位置づけられる。研究グループの伊藤は、血中のがん反応性T細胞について「干し草の中の針のようなもの」と表現しつつ、多数集めて増やすことができれば新しい治療につながる可能性があるとコメントしている。

事実関係の整理

  • 情報の種類:学術論文(研究成果発表)
  • 公表元:京都大学、共同研究:千葉大学
  • 主な研究者:谷口智憲、茶本健司、伊藤克弘、猪爪隆史
  • 対象:免疫チェックポイント阻害剤治療を受けた非小細胞肺がん(NSCLC)患者の血液
  • 主要な知見:血中のがん反応性T細胞を識別するマーカーの発見、治療前後での性質変化
  • 掲載誌:『Nature Communications』(2026年2月17日オンライン掲載)
  • 留意点:本研究段階では血液検査による効果予測や治療応用の実現性は確立されておらず、今後の研究の進展が必要とされる

参考文献


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