藤田医科大学、軽度認知障害がフレイルと独立して歩行速度低下と関連すると発表
藤田医科大学の研究チームは、60歳以上421人を対象とした横断研究で、軽度認知障害(MCI)がフレイルとは独立して歩行速度の低下と関連することを報告した。
フレイルとMCIが同時に生じることが多いため、両者がそれぞれ独立して歩行速度に関連するのか、これまで明確ではなかった。今回の分析では、フレイルとMCIがそれぞれ直接歩行速度と関連する一方、両者の間に相互作用は認められなかったとしている。
MCIとフレイルがそれぞれ独立して歩行速度と関連
藤田医科大学医学部リハビリテーション医学講座の大高洋平教授らの研究チームは、東京と名古屋のシルバー人材センターを通じて募集した60歳以上421人を対象に、2024年6月から11月にかけて横断研究を実施した。参加者は10メートルの歩行試験を、自分にとって快適な速度で歩く条件と、できるだけ速く歩く条件の2通りで行った。歩行速度は、加速・減速に用いる最初と最後の2メートルを除いた中央6メートルの通過時間から算出した。
フレイルは日本語版「基本チェックリスト」、MCIは日本語版モントリオール認知評価を用いて評価した。これらの結果に基づき、参加者はフレイル+MCIあり、フレイル+MCIなし、プレフレイル+MCIあり、プレフレイル+MCIなし、非フレイル+MCIあり、非フレイル+MCIなしの6群に分類された。
媒介分析の結果、フレイルとMCIはそれぞれ独立して歩行速度と関連することが示された。最も支持された分析モデルでは、フレイルとMCIがそれぞれ直接歩行速度と関連しており、一方が他方を介して歩行速度に影響している根拠はほとんど認められなかった。この結果は、MCIと歩行速度低下との関連が、フレイルとはおおむね独立したものであることを示唆するとしている。
年齢、性別、体格指数(BMI)を考慮しつつフレイルとMCIを同時に検討した分析でも、同様の結果が確認された。フレイルとMCIの間に統計的に有意な相互作用は認められず、両者の状態が組み合わさることで歩行速度に相乗的な影響を及ぼすという根拠は示されなかったとしている。
歩行速度評価の位置づけ
歩行は日常生活における基本的な動作であり、高齢者の身体機能と認知機能の両方を反映しうるとされる。歩行速度の低下は、身体がストレスに対する耐性を失った状態であるフレイルと関連することが知られており、すでに身体機能の指標として広く用いられている。一方、日常生活の自立を大きく損なわない範囲での認知機能の低下を指すMCIも、歩行速度の低下と関連することが示されてきた。
しかし、フレイルとMCIは同時に生じることが多いため、MCIと歩行速度低下との関連が、身体機能とは独立したものなのかどうかは明確になっていなかった。今回の研究は、この点を分離して検討することを目的に行われた。研究成果は2026年5月9日にオンラインで公開され、学術誌『BMC Geriatrics』の2026年12月1日発行号(第26巻)に掲載される予定とされている。
研究チームは、今後の研究課題として、日常生活における歩行の変化が身体的な機能低下と認知的な機能低下を区別する手がかりになるかどうかを挙げている。ウェアラブル機器を用いて歩行評価を日常的な健康チェックに組み込む可能性にも言及しているが、日常生活で測定される歩行がこれらの異なる側面をどの程度反映するかについては、さらなる研究が必要であるとしている。
事実関係の整理
- 情報の種類:学術研究(横断研究)
- 発表元:藤田医科大学医学部リハビリテーション医学講座(大高洋平教授ら)
- 対象:東京・名古屋のシルバー人材センターを通じて募集した60歳以上421人
- 主要評価指標:日本語版基本チェックリスト(フレイル)、日本語版モントリオール認知評価(MCI)、10メートル歩行試験による歩行速度(快適歩行・最大歩行)
- 掲載誌:『BMC Geriatrics』2026年12月1日発行号(第26巻)、オンライン先行公開は2026年5月9日
- 留意点:横断研究であり、観察された関連は因果関係を示すものではない
参考文献