研究

麻疹の国内流行、2026年は1995~2005年生まれの世代に集中-東京大学が接種制度移行期との関連を分析

グローバル医療と社会の関係をテーマに、タブレット端末を操作する医療従事者のイメージ

 東京大学医科学研究所の研究グループは、国内の麻疹発生動向調査のデータを分析し、2026年の麻疹流行が海外からの持ち込みを起点として、麻疹風疹混合ワクチンの2回接種制度の移行期に生まれた世代に患者が集中していることを明らかにした。

 日本は2015年に世界保健機関(WHO)から麻疹の排除状態の認定を受けているが、2026年第20週時点で498人の患者が報告され、2020年以降の年間合計を上回る水準となっている。

2026年の麻疹流行、世代偏在が判明

 東京大学医科学研究所国際健康医療推進社会連携研究部門(東亜建産株式会社との社会連携研究部門)の湯地晃一郎特任准教授と、同研究所感染症研究部門情動ウイルス学分野の安達英輔講師らの研究グループは、国の感染症発生動向調査のデータを分析し、2026年に日本で生じた麻疹の流行が海外からの持ち込みを起点としていることや、患者が予防接種制度の移行期に生まれた世代に集中していることを明らかにした。

 国内では2026年の第20週(5月20日時点)までに麻疹患者498人が報告されており、2020年以降のいずれの年間合計も上回る水準となっている。患者は47都道府県のうち27に及び、複数の感染の連鎖が同時に起きていた。人口10万人あたりの患者数が最も多い年齢層は、2019年の30~34歳から2026年には20~24歳へと移っていることも分かった。

 研究グループによると、1回目の接種率は92.7%、2回目は91.0%(いずれも2024年度)であり、感染の連鎖を断つ目安とされる95%を下回っていた。また、2回目接種の記録がある患者159人のうち89人(56%)が、ワクチンによる一定の免疫を持つ人が感染した場合に生じる軽症の麻疹である修飾麻疹に該当していた。

接種制度の変遷と世界的な排除状態の揺らぎ

 麻疹は、免疫のない集団では1人の患者から平均12~18人に感染するとされる、感染力の極めて強い感染症である。世界では2025年11月に南アメリカ地域が、2026年1月には英国を含む欧州の6カ国が、それぞれ麻疹の排除状態の認定を失ったと研究グループは説明している。

 日本の麻疹の定期予防接種は1978年に1回接種として始まり、2006年度から麻疹風疹混合ワクチンによる2回接種制度に移行した。2007~2008年の流行を受け、2008年度からの5年間には、当時中学1年生と高校3年生に相当する年齢の人、すなわちおおむね1990~2000年生まれの世代に対し、2回目の接種を行う機会が設けられた。このため、1995~2005年ごろに生まれた人々は、1回目は1回接種の制度の中で受け、2回目は経過的な措置として2回接種制度の開始当初に受けることになり、2回目を受けないまま成人した人もいるとされる。研究グループは、こうした制度移行期に生まれた1995~2005年生まれの世代に患者数が多いことに注目している。

 ウイルスの遺伝子型を見ると、2023年はD8型、2024年はB3型が多数を占め、2026年は再びD8型が多数となっており、主な感染源となる流行地が年によって入れ替わっていることがうかがえるという。研究グループは、こうした流行地の変化や接種率の状況が、国内の患者数や年齢層の分布に影響している可能性を踏まえ、分析を進めたとしている。

事実関係の整理

  • 情報の種類:感染症発生動向調査データに基づく研究分析
  • 発表元・研究主体:東京大学医科学研究所国際健康医療推進社会連携研究部門、同研究所感染症研究部門情動ウイルス学分野
  • 対象:国内で報告された麻疹患者、感染症発生動向調査の公開データ
  • 主要指標:2026年第20週までの患者数498人、1回目接種率92.7%、2回目接種率91.0%(いずれも2024年度)、修飾麻疹の割合56%(89/159人)
  • 留意点:本研究は公開されている国の集計データのみを用いており、個人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針に基づく倫理審査の対象として実施された

参考文献


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