研究

京都大学、全国1万4430例の移植データから慢性GVHDと予後を予測する機械学習モデルを開発

病気の克服を目指す研究動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 京都大学大学院医学研究科の髙折晃史教授、諫田淳也講師、岩﨑惇研修員、日本造血細胞移植データセンターの熱田由子センター長らの研究グループは、全国の同種造血幹細胞移植レジストリを用い、移植後の慢性移植片対宿主病(慢性GVHD)と中長期予後を予測する機械学習モデルを開発したと発表した。

 移植前の情報だけでなく、移植後30日、60日、100日までに得られた急性GVHDの発症や重症度、治療への反応を順次加えることで、24カ月以内の慢性GVHDや死亡に関する予測精度が向上することを示した。本成果は2026年8月5日に国際学術誌『Frontiers in Immunology』への掲載が決定し、受理論文としてオンライン公開された。

移植後の経過を加えることで予測精度が向上

 研究グループは、日本造血細胞移植データセンターが保有する全国の同種造血幹細胞移植レジストリのうち1万4430例を対象に、複数の統計学的手法と機械学習手法を組み合わせるスタックド・アンサンブルモデル(SEM)を構築した。従来の予測モデルは主に移植前の患者情報、疾患情報、ドナー情報に基づいていたが、本研究では移植後30日、60日、100日という各時点までに得られた急性GVHDの発症、重症度、治療内容、治療への反応をモデルに順次加えた。

 その結果、移植後の情報が蓄積するにつれて、24カ月以内の慢性GVHD、非再発死亡、全死亡それぞれの予測能が向上することが示された。具体的には、重症急性GVHDの情報が非再発死亡と全死亡の予測において重要な役割を果たし、急性GVHDの発症と初回治療への反応が慢性GVHDの予測において重要であることが確認された。

移植前情報に依存してきた従来の予後予測

 同種造血幹細胞移植では、移植後に発症する急性GVHDや慢性GVHDが中長期の予後に影響を与えることが知られている。これまでの予後予測モデルの多くは、移植を実施する前の時点で把握できる患者の年齢や疾患の種類、病期、ドナーとの適合性といった情報を基に構築されており、移植後に実際に生じる経過を反映させる仕組みは限定的だった。

 本研究では、移植前の一時点における情報のみに依拠するのではなく、移植後に観察された急性GVHDの発症や重症度、治療反応といった経過情報を段階的に組み込むことで、時間の経過とともにリスク評価を更新していく「動的な予後予測」という考え方を採用した。全国規模のレジストリデータを用いたことで、多数の症例に基づく検証が可能となっている。

事実関係の整理

  • 情報の種類:研究発表(学術論文)
  • 発表主体:京都大学大学院医学研究科、日本造血細胞移植データセンター
  • 対象:全国の同種造血幹細胞移植症例1万4430例
  • 主要手法:スタックド・アンサンブルモデル(SEM)による機械学習
  • 主要指標:慢性GVHD、非再発死亡、全死亡の24カ月以内の予測能
  • 掲載誌:『Frontiers in Immunology』(2026年8月5日掲載決定、受理論文としてオンライン公開)
  • 留意点:本モデルは治療方針を単独で決定するものではなく、今後バイオマーカー等を加えた発展が検討されている

参考文献


ARCHIVE

新着記事

日本での医療や観光から探す

研究や開発から探す

関連の国から探す

関連の制度から探す