大阪公立大学、コリスチン使用禁止後のタイでmcr遺伝子保有菌を検出、小規模農場流通の食肉から確認
大阪公立大学大学院獣医学研究科などの研究グループは、家畜へのコリスチン使用禁止後のタイにおいて、市場で販売されている食肉中のプラスミド媒介性コリスチン耐性(mcr)遺伝子の保有状況を調査した。
小規模農場産の食肉を扱うオープンマーケットで購入した鶏肉と豚肉からmcr遺伝子が検出された一方、大規模農場産の食肉を扱うスーパーマーケットの食肉からは検出されなかったと報告している。
オープンマーケット流通の食肉からコリスチン耐性遺伝子を検出
大阪公立大学大学院獣医学研究科の山﨑伸二教授、Sharda Prasad Awasthi(シャルダ プラサダ アワスティ)特任准教授、Ahmed Abououf(アハメド アブウフ)氏(研究当時:大学院生)、同大学院医学研究科の金子幸弘教授、タイ タマサート大学、エジプト国立動物衛生研究所の研究グループは、2023年7月から9月にかけて、タイのオープンマーケットとスーパーマーケットで販売されている鶏肉と豚肉を対象に、プラスミド媒介性コリスチン耐性(mcr)遺伝子の検出を試みた。
オープンマーケットで購入した鶏肉39検体、豚肉30検体と、スーパーマーケットで購入した鶏肉64検体、豚肉19検体を検査した結果、スーパーマーケット由来の食肉からはmcr遺伝子は検出されなかった。一方、オープンマーケット由来の食肉のうち、鶏肉6検体(15.4%)と豚肉4検体(13.3%)からmcr遺伝子が検出され、分離した菌の多くは多剤耐性の大腸菌であることが分かった。さらに、高病原性で基質拡張型βラクタマーゼ産生性のクレブシエラも2株確認されたという。
本研究成果は、2026年7月6日に国際学術誌『Microbiology and Immunology』にオンライン掲載された。
コリスチン使用制限の経緯と今回の調査の位置づけ
コリスチンは1950年代から使用されている抗菌薬であり、副作用の問題から一時使用が制限されていた。その後、2010年代に多剤耐性菌感染症の増加が問題となる中で、コリスチンは最後の切り札として再び使われるようになった。しかし2016年に中国でプラスミド媒介性コリスチン耐性(mcr)遺伝子が確認され、コリスチンの使用を続けると耐性菌が広がる可能性があるとして注目を集めた。
このような経緯を受け、世界保健機関(WHO)は2017年に、成長促進や感染症予防を目的として家畜へコリスチンを使用しないよう勧告した。2018年以降、タイを含む多くの国で家畜へのコリスチン使用が禁止されたが、タイにおける実際の使用状況はこれまで把握されていなかった。
タイのオープンマーケットでは小規模農場で生産された食肉が販売されているのに対し、スーパーマーケットでは大規模農場産の食肉が販売されている。今回の調査では、この流通経路の違いに着目し、両者の食肉を比較する形でmcr遺伝子の保有状況が調べられた。
事実関係の整理
- 情報の種類:研究発表(学術論文)
- 発表主体:大阪公立大学大学院獣医学研究科、大学院医学研究科、タイ タマサート大学、エジプト国立動物衛生研究所
- 対象:タイのオープンマーケットとスーパーマーケットで購入した鶏肉・豚肉(合計152検体)
- 主要結果:オープンマーケットの鶏肉15.4%(6/39検体)、豚肉13.3%(4/30検体)からmcr遺伝子を検出。スーパーマーケットの食肉(鶏肉64検体、豚肉19検体)からは検出なし
- 留意点:分離菌の多くは多剤耐性の大腸菌で、基質拡張型βラクタマーゼ産生性のクレブシエラも2株確認された
参考文献