研究

京都大学、アレルギー性皮膚炎の「再燃の火種」となる記憶T細胞と維持機構を解明

病気の克服を目指す研究動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 京都大学大学院医学研究科の椛島健治教授と岐阜大学高等研究院の朝比奈良太特任准教授らの研究グループは、アレルギー性皮膚炎の症状が治まった後も皮膚に残り、再燃の起点となる免疫細胞を特定した。

 マウスモデルの解析により、この細胞はCXCR6を発現する記憶T細胞であり、皮膚の血管周囲で樹状細胞とクラスターを形成して維持されることが示された。同様の構造はアトピー性皮膚炎患者の皮膚でも確認された。研究成果は国際学術誌『Immunity』に2026年10月12日付でオンライン掲載された。

再燃を引き起こす記憶T細胞とその拠点構造を特定

 研究グループは複数のマウスモデルを用いて、アレルギー性皮膚炎の炎症が一度治まった後も皮膚に残存する記憶T細胞を解析した。その結果、これらの記憶T細胞の中に、皮膚炎を再び引き起こす「火種」となるCXCR6陽性の記憶T細胞が存在することを特定した。この細胞は単独で存在するのではなく、皮膚の血管周囲で樹状細胞とともにクラスターを形成し、「免疫細胞の拠点」とも呼べる構造を作っていた。この拠点は、CXCR6陽性記憶T細胞とCXCL16を発現する樹状細胞との相互作用によって維持されていることが示された。さらに、アトピー性皮膚炎患者から得られた皮膚組織を解析した結果、症状が改善した後の皮膚にも同様のクラスター構造が残存していることが確認された。

再燃という臨床課題と組織常在記憶T細胞の位置づけ

 アレルギー性皮膚炎は、治療によって一時的に症状が改善しても再び炎症が起こる再燃が課題とされてきた。近年の研究では、感染や炎症が治まった後も、原因となった組織に長期間とどまり続ける組織常在記憶T細胞の存在が知られており、これらが再燃や局所免疫応答に関わる可能性が指摘されてきた。今回の研究は、この組織常在記憶T細胞の中でも、どの細胞集団が再燃に直接関わるのかを、CXCR6という分子を手がかりに特定した点に位置づけられる。

 また、記憶T細胞が単独で機能するのではなく、樹状細胞とクラスターを形成し、CXCL16を介した相互作用によって維持される「拠点」として存在するという知見は、皮膚局所における免疫記憶の維持機構を理解するうえでの要素として位置づけられる。マウスモデルで得られた知見がヒトのアトピー性皮膚炎患者の皮膚組織でも同様に観察された点は、動物実験の結果とヒトの病態との関連を考える上での手がかりとなる。

事実関係の整理

  • 情報の種類:学術論文(基礎研究)
  • 発表主体:京都大学大学院医学研究科(椛島健治教授)、岐阜大学高等研究院One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター(朝比奈良太特任准教授)
  • 対象:複数のアレルギー性皮膚炎マウスモデル、アトピー性皮膚炎患者の皮膚組織
  • 主要知見:CXCR6陽性記憶T細胞と樹状細胞が血管周囲にクラスターを形成し、CXCL16を介した相互作用で維持される
  • 掲載誌:国際学術誌『Immunity』(2026年10月12日午前11時、米国東部時間、オンライン掲載)

参考文献


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