研究

NCGMの非居住外国人入院未払い要因 旅行保険不在が関連を示す

グローバル医療と社会の関係をテーマに、タブレット端末を操作する医療従事者のイメージ

 「JPNMEDICAL」は、日本の医療をめぐる動向を中立に整理して伝える。制度、統計、研究、医療提供体制、医療機関の運用、国際的な動きも対象に含める。今回の記事で伝える情報は次の通り。

概要

 東京の「国立国際医療研究センター(NCGM)」で、非居住の外国人入院患者の未払い(退院時点で支払いが記録されていない請求)に関連する要因を調べた後ろ向き観察研究が報告された。解析対象153例のうち、未払いは9例(5.9%)だった。

 研究は、2023年1月〜2025年2月に入院した非居住の外国人患者を電子カルテと請求データベースから抽出し、人口統計、入院日数、集中治療など高強度ケアの利用、請求総額、第三者の金銭支援の有無などを用いて、未払いの予測因子をロジスティック回帰で検討した。医療ツーリズムなどの予定入院は除外した。

 多変量解析では、第三者の金銭支援(主に旅行保険など)の不在が主要な独立因子として示され、請求総額も未払いリスクと関連した。未払い群は、支払い完了群と比べて入院期間が長く、請求総額が高い傾向が報告された。

背景

 論文は、訪日者は日本の公的医療保険の対象外であり、医療費の全額自己負担となり得る点を前提に、未払いが医療機関の財務リスクになり得ると整理している。そのうえで、日本における非居住の外国人患者の未払いの関連要因を、患者レベルのデータで数量的に検討した研究は限られるとして、解析を行った。

 また、第三者の金銭支援として、旅行保険のほか、特定の感染症に関する公的助成や、難民支援団体(例:RHQ)による支援も定義に含めたとしている。

詳細

  • 情報の種類→研究(論文)
  • 公表元→学術誌「Healthcare(MDPI)」
  • 公表日→2025年11月13日(論文記載)
  • 対象→非居住の外国人入院患者における未払い(退院時点の未精算)の関連要因
  • 対象期間→2023年1月〜2025年2月
  • 根拠→『Determinants of Unpaid Hospital Charges Among Non-Resident Foreign Patients: A Retrospective Single-Center Study in Tokyo, Japan』
  • 主要指標→未払いの有無、第三者の金銭支援の有無、請求総額、入院日数、高強度ケア利用など
  • 主要な数値→対象153例、未払い9例(5.9%)。未払い群の入院期間の中央値12日、支払い完了群は6日。請求総額の中央値は未払い群4,538,320円、支払い完了群1,091,270円。第三者の金銭支援は未払い群11.1%、支払い完了群61.0%。
  • 比較→未払い群と支払い完了群の比較(単変量)、ロジスティック回帰による多変量解析
  • 留意点→単施設の後ろ向き観察研究で、未払いイベントは9例と少なく、推定の不確実性に留意が必要。未払いの定義は「退院時点で支払い記録がない」請求であり、退院後の回収は評価対象外となり得る。
  • 今後の焦点→複数施設での検証、第三者支援(旅行保険など)の加入・精算手続きの設計、国際的な費用回収の枠組みの整理

論点

 本研究では、第三者の金銭支援の有無が、未払いと独立に関連する因子として示された。論文の文脈では、第三者支援の中心は旅行保険であり、入院費の支払いに関する不確実性と結びつけて整理されている。

 一方で、未払いの定義は「退院時点の未精算」である。退院後の回収の可否や、部分的な支払いの取り扱いなど、医療機関の実務と照合して読み取る必要がある。また、単施設かつイベント数が少ない点から、他施設・他地域に一般化する場合は追加データが必要となる。

参考文献

 『Determinants of Unpaid Hospital Charges Among Non-Resident Foreign Patients: A Retrospective Single-Center Study in Tokyo, Japan』(Healthcare 2025, 13(22), 2893)
https://www.mdpi.com/2227-9032/13/22/2893


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