日本

厚労省実証で検証された倉敷の医療インバウンド受入れモデル──倉敷成人病センターによる婦人科手術を軸とした取組

日本の医療制度と最新動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 厚生労働省「地域の医療・観光資源を活用した外国人受入れ推進のための調査・実証事業(令和6年度)」において、倉敷地域では、婦人科手術を中心とする医療を軸に、医療インバウンドの受入体制構築と海外市場での検証が実施された。

 本記事では、倉敷地域における今年度の取組内容、造成された滞在プラン、海外プロモーションおよび中国市場調査の結果を整理する。


事業の位置づけ

 倉敷地域の実証事業は、婦人科疾患に対する手術医療を提供する倉敷成人病センターを中心に、観光事業者、医療渡航支援企業、行政、DMO、金融機関など多様な主体が参画して実施された。

 医療内容が「手術」である点を前提に、治療そのものだけでなく、術前・術後の滞在環境や同行家族への配慮を含めた受入体制の構築が重視された。

今年度に実施した主な取組

① 滞在プラン造成・受入れフローの確立

 倉敷地域では、提供医療が婦人科手術であることから、患者の身体的負担を考慮し、過度な観光を組み込まない滞在設計が求められた。

 このため、患者本人の治療・回復を優先しつつ、同行する家族向けに半日観光を組み合わせた滞在プランを作成した。

 あわせて、倉敷成人病センターの院内スタッフから意見を収集し、患者問い合わせから手術、退院、帰国後フォローアップまでの一連の流れを可視化した業務フロー図(オペレーションフロー)を作成した。

② 販路構築・海外プロモーション

 北京国際医療観光展示会に出展し、倉敷地域の医療内容と観光資源を紹介した。展示会では、個人来場者および医療渡航支援企業、エージェントと連絡先を交換した。

 展示会後には、中国の医療渡航支援企業および北京の医療機関国際部担当者が倉敷成人病センターを訪問し、院内見学と意見交換を実施した。その後、倉敷側が北京を訪問し、患者紹介に関する連携について打ち合わせを行った。

 さらに、在上海日本国総領事館において「岡山から発信する日本先端医療」をテーマとしたセミナーを開催し、倉敷地域の医療と観光を紹介するとともに、参加者アンケートを通じて中国人の婦人科疾患ニーズを収集した。

③ 中国婦人科疾患に関する追加市場調査

 北京展示会の来場者を対象に、倉敷地域の医療および観光に対するイメージ調査を実施し、中国人の婦人科疾患治療ニーズを確認した。

 あわせて、上海グリーンクリニックの医師にヒアリングを行い、中国における婦人科医療の現状や患者ニーズについて調査した。

 さらに、上海の日系企業に勤務する中国人社員を対象にアンケート調査を実施し、倉敷地域に対する医療・観光ニーズの詳細を把握した。

④ 国内連携体制の構築

 医療インバウンドを継続的に推進するため、倉敷地域では観光事業者等と定期的に会議を開催する体制を整備した。

 また、プレスリリースやメディアアプローチを通じて、医療と観光の連携による地域の取組を対外的に発信した。実際に、日本経済新聞(2024年11月13日)、山陽新聞(2025年1月11日)で関連事業が報道されている。

滞在プランのモデル構成

  • 医療機関:倉敷成人病センター
  • 医療内容:婦人科手術(術前検査、手術、術後フォローアップ)
  • 宿泊:倉敷アイビースクエア、倉敷ロイヤルアートホテル 等
  • 滞在日数:術前検査~術後回復を含む約8~10日間
  • 同行家族向け観光:倉敷美観地区散策、いちご狩り、岡山城・後楽園 等
  • 帰国後対応:手術後フォローアップ

今年度の検証から整理された論点

  • 中国では婦人科疾患の治療が国内でも可能であるため、日本で治療を受ける付加価値の明確化が必要とされた。
  • 価格面では、回答者の多くが当初設定価格より低い水準を希望しており、富裕層を明確にターゲットとした戦略が求められる。
  • 倉敷および岡山の地理的認知度が低く、医療を主、観光を従とする訴求が現実的と整理された。
  • 受入れフローについては、実際の外国人患者を想定した検証を通じた改善が今後の課題として示された。

参考文献

地域の医療・観光資源を活用した外国人受入れ推進のための調査・実証事業 令和6年度事業結果の概要(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/001476945.pdf


ARCHIVE

新着記事

日本での医療や観光から探す

研究や開発から探す

関連の国から探す

関連の制度から探す