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厚労省実証で整理された岐阜・愛知の外国人健診受入れモデル──シミックHDと中部国際医療センターの取組

日本の医療制度と最新動向。写真はイメージです。(写真:Adobe Stock)

 厚生労働省「地域の医療・観光資源を活用した外国人受入れ推進のための調査・実証事業(令和6年度事業結果の概要)」から、岐阜・愛知地域におけるモデル実証の内容を整理する。

 本事例では、健診を軸に地域文化・自然を組み合わせたウェルネスツーリズムの実装可能性を、中国富裕層を対象としたモニター実証を通じて検証した。


事業全体の位置づけ

 岐阜・愛知地域は、令和6年度の厚生労働省モデル実証地域として、2024年8月末に採択され、9月から取組を開始した。

 当初は国内の連携体制構築に注力し、自治体や観光事業者から得た情報、ならびにインバウンド向けワークショップで実施されたSWOT分析を踏まえて滞在プランを設計した。その後、海外プロモーション、モニター実証へと段階的に展開した。

今年度に実施した主な取組

① 連携体制の構築

 事業開始後、関係者は各自治体を訪問し、厚生労働省事業の趣旨を説明した上で協力を要請した。自治体からは、観光名所、インバウンド対応状況、課題などが共有され、それらをもとに観光地・宿泊施設・店舗を個別に訪問し、受入協力を得た。

 隔週でのオンライン定例会議と現地打合せを通じ、健診内容と観光行程のすり合わせ、豪雪時の代替ルート検討など、実務レベルでの調整が継続的に行われた。

② 滞在プランの造成

 造成された滞在プランのコンセプトは「継続可能なウェルネスツーリズムと愛知・岐阜の文化・自然を楽しむ旅」である。

  • 日程:5泊6日
  • 医療拠点:中部国際医療センター(健診、陽子線治療装置を有する)
  • 主な滞在地:犬山(2泊)、郡上八幡、飛騨高山、名古屋
  • 観光要素:犬山城、犬山焼絵付け体験、関の刃物・刀鍛冶体験、食品サンプル作成、白川郷、高山古い町並み散策、名古屋グルメ・ショッピング

 健診前後の行程や移動時間を考慮し、観光・体験を分散配置することで、長距離移動の負担を抑える設計とされた。

③ プロモーション(北京国際医療観光展示会)

 2024年11月に北京で開催された国際医療観光展示会に、岐阜・倉敷・沖縄の3地域合同で出展した。岐阜からは中部国際医療センターおよびシミックホールディングスの職員が参加し、中国語で来場者対応を行った。

 展示会では20分間のセミナー講演も実施され、日本医療の特徴紹介に続き、各地域の魅力を説明した。来場者アンケートにより、岐阜・愛知エリアへの医療渡航ニーズが把握された。

 パンフレット配布は紙媒体を最小限とし、QRコードによるデジタル配布を基本とした点も、中国市場の特性を踏まえた対応であった。

④ モニター実証

 中国・上海出身者がモニターとして参加し、中部国際医療センターで健診を受診後、岐阜・愛知エリアを周遊するツアーを実施した。

 ツアー終了時には対面ヒアリングを行い、さらに健診結果が中国へ送付された後、オンラインでフォローアップヒアリングを実施し、結果通知や説明のあり方について追加の意見を収集した。

事業推進体制(岐阜・愛知)

 本事例では、シミックホールディングスがPMOとして全体調整を担い、医療・観光・行政を横断する体制を構築した。

  • 医療機関:中部国際医療センター、高山赤十字病院
  • 行政・自治体:高山市、犬山市、郡上市、白川村(観光課・商工観光部等)
  • 観光・宿泊:名鉄ホテルホールディングス、名鉄観光サービスほか地域事業者
  • 海外連携:上海の医療・投資関連組織、同済大学附属病院との連携(MOU締結)

 健診事前問診の共有、通訳・アテンド、交通・宿泊手配、帰国後フォローまでを含む一体的な受入モデルが検討された。

モニター実証から得られた示唆

  • 健診は、生活習慣や既往歴を踏まえた事前問診に基づく検査項目のカスタマイズ提案が高く評価された。
  • 健診後のフォローとして、一般論ではなく個別具体的な生活改善アドバイスを求める声が多かった。
  • 犬山焼や食品サンプル、一刀彫・刀鍛冶など、地域の経営者や職人の思いが伝わる体験が特別感を生み、高額購入につながった。
  • 地方へのアクセスの不便さは、自分たちでは行けない日本を体験できる価値として肯定的に受け止められた。

見えた課題と今後の方向性

 中国国内のVIP健診と比較すると、日本への渡航費を含めた総コストは割高となるため、コストパフォーマンスの整理が課題として挙げられた。

 また、中国市場ではWeChatを中心としたコミュニケーションが主流である一方、日本側の運用制約がプロモーション上の制約として顕在化した。

 今後は、健診と観光のセットプランの高度化、検査項目を絞ったパッケージ設定、リピーター向け施策、健診後のオンラインフォローアップなどが検討事項として整理されている。

参考文献

地域の医療・観光資源を活用した外国人受入れ推進のための調査・実証事業 令和6年度事業結果の概要(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/001476945.pdf


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